9話 Fランク
閲覧ありがとうございます!そろそろ10話になろうというところで、過去の話も表現が足りないところを加筆していこうか悩んでいます。物語の根幹にかかわる部分を加えたり、変更はするつもりはないです。なるべく多くの人に楽しんでもらえるように頑張りますので、何卒宜しくお願い致します。
今日は考査結果発表の日だ。
午後の授業で、奈良先生から知らされることになっている。
ランク分けは基本A〜Eの5段階で評価される。それに加え、特別ランクが二つある。
即戦力級のSランク、それとは正反対の、Eランクにも満たないと判断された者、すなわち能力が使えない者はFランクへとなる。
そして、この結果発表後はそのランク同士で授業を行っていくことになる。
このランクを上げていきたければ、各学期末考査で結果を残さなければいけない。
残せたとしても、昇級しないと意味がない。そして何より、Fランクは夏にある強化合宿の参加資格がなくなる。
それだけは避けたい。山奥で合宿があるらしいが、山へ行くなら、タマモとテンコの親も見つかるかもしれない。
自分の新しいパートナーも見つけられるかもしれないんだ。
奈良先生が特別棟へ入ってくる。いよいよだ。なんとなく分かっているけど、もしかしたらとどうしても思ってしまう。
「さぁ。考査の結果発表するぞ!」
みんなそわそわしている。期待している者、不安な者、確かな自信がある者。それぞれがその結果に耳を傾けている。
考査結果は1組から順番には発表された。そして、いよいよ3組の番だ。今の所SランクもFランクもいない。
「では、次3組いくぞ!まずは相原!お前はなかなか頑張っていたがもう少し努力が必要だ。Cランクだ!!」
本人は、ほっとしたような、納得いってないような表情だった。
「次は伊海!落ち着いて戦えていて、戦略的な部分もあったが、あと一歩という感じだ。よって、Bランクだ!」
伊海は、さほどびっくりしていないのか、冷静に結果を受け入れていた。なんでいつもあんなに伊海は冷静なんだろ?見習いたい。
「次は島風。お前には何も言うことは無い。圧倒的な強さを見せつけた。今後も期待しているぞ。Aランクだ!」
やはりな。むしろSではなかったんだな。最初の考査だから控えめだったのかな?
そして次はいよいよ俺の番だ。
「神藤!Fランクだ!」
ですよねー。って、心なしか俺の時発表早くない??やっぱりFランクだったか。わかってはいたけど、いざ確定すると結構ダメージ来るな…。しかも、島風さんに鼻で笑われた気がした。
考査で能力を発動してなかったから仕方ないよな。少しはがんばっていたと思っていたが、ダメだったか。次の考査では絶対にEランクには上がらないと…。あいつらの為にも、そして自分の為にも。
すべての考査結果の発表が終わり、それぞれのランクごとに集まって、自己紹介をしていた。Fランクは俺含めて4人だった。結構Fランクにいるんだな。てっきり一人かと思っていた。それにしても…
「なんで、お前がいるんだ?」
「え?にゃんでって、Fランクだからにゃ?」
「絶対手を抜いただろ…猫間。」
ニコニコして何も言わないところを見ると図星だな。そこまでして付いてこなくていいのに。どうしてそんなに慕ってくれるんだだろ。そんなことよりも、自己紹介しなくちゃ。
「俺は1年3組の神藤 未蕾だ。この二人はタマモとテンコ。俺の能力で、今は仲間になってくれている。」
「じゃあ次は吾輩にゃ!1年4組の猫間 ネコだにゃ!!魔法使いだにゃ♪」
俺に続けて、猫間も自己紹介した。魔法使いって言ってたが、能力が魔法使いなのかな?能力が魔法使いだとしたら、範囲広くね?強いじゃん、絶対。
そんなこと思っていると、次の子が口を開いた。
「私は1年5組、井伊野 心愛ですぅ。将来の夢は看護師ですぅ。」
唐突な将来の夢を聞かされたが、看護師とは珍しい。ふわふわした雰囲気の子で、ちっちゃくてかわいい♪って、いやいや、そういう目で見ちゃいかん!もう一人自己紹介聞かなくちゃ!
「うちは1年5組。よろしく。」
うわぁ、こんな典型的なギャルまだいるんだ。金髪に染めて、制服は崩して着ていて、スカートもめっちゃ短い。俺みたいな陰キャには苦手なタイプだ。
「改めてよろしく。それじゃあ始めようか。」
各ランクごとに集まり、それぞれの課題をこなすことになっていた。他のランクの人達は能力を伸ばす為の課題を与えられていたが、ここFランクでは、それぞれが能力を発現できるように努力をする。という課題を与えられていた。つまり、完全放置されているのだ。使えないものは切り捨てられていく、まるで社会の縮図の様だ。
「俺は一応、一回は能力を発動できているんだが、みんなは能力使えるの?」
「吾輩は使えるにゃ!」
お前やっぱり、わざとFランクになっただろ!!4組だから俺の考査見て、力を調整したんだな。なんでそこまでして…。
「私は能力は使えますが、戦闘向きではなくてぇ、考査では使えず終わってしまいましたぁ。」
「え?井伊野さん能力使えるの?」
「はい。私の能力はリカバリーなんですぅ。回復はできるんですけど…ね?痛いのは嫌だなーって、考査では使わずに大人しく負けましたぁ。」
そういうことだったのか。確かに回復能力だと、戦闘では、まず自分が傷つかないといけないしな…。でも、Fランクにするほど弱い能力ではないだろ。そうなると、この学校の考査のシステムが問題じゃないか?じゃあ、このギャルもそんな事情で…
「あ、ウチは、サボり。」
普通にサボりだったぁー!見た目のまんまやん!ということは、Fランク全員特にやることは無いのか。なら、俺は自分の能力が安定して使えるようになる為、色々試したいところだ。
「かわいいー、触らせてー。」
といって、タマモとテンコを触る。ギャルに触られて気持ちいのか、二人は体を委ねている。井伊野も一緒に触りだしていた。猫間は興味がないのか、触ろうとはしていなかった。暫くのんびりタイムを過ごしていたが、次のことも考えないと。
学期末考査では、同じランク同士で中間考査の時と同じく1VS1 で試合をするらしい。Fランクの俺らはそこで、能力をうまく使い、試合が出来ていたら、晴れて昇級するらしい。つまり、Fランクの考査は結果よりも中身が大切なんだ。だから俺らFランクが最初にやることは…
「なぁ、少し聞いてくれないか?」
みんな一斉にこちらを向く。一人一人の顔を見ながら、言葉を続ける。
「俺らの次の考査は能力を使いこなしていれば、昇格確定だ。だからこの4人で八百長試合をしないか?」
少し驚いたのか、だれも何も言わない。一瞬遅れて猫間が賛同してくれた。
「神藤君がそうしたいなら、協力するにゃ!」
「ウチはどっちでもいいよ。」
「大丈夫ですかぁ?」
井伊野さんは八百長して大丈夫か心配しているみたいだ。
「お互いが能力をちゃんと使えることを証明できれば、いいんだ。だから、あいてをむやみに傷つけないし、そうすれば、井伊野さんも痛い思いをしないで済むでしょ?一通り見せ終わったら、棄権したっていいしね。」
「神藤君て、優しいですねぇ。じゃあ、お言葉に甘えて参加させていただきますぅ♪あと、井伊野でいいよぉ!あれ?今なんかダジャレっぽくないですかぁ?」
「ハハっ。ありがとう!じゃあ井伊野。よろしくね。じゃあ、そっちの…その・・・」
井伊野が、ちょっとぉー!って言っているが、無視してギャルに話を振る。
「は?ウチの名前覚えてねーの?うざ、サイテー。」
えぇー?まだ教えていただいてないんですけども!なんて理不尽なんだ。
そんな様子を見てか、井伊野が助け舟を出してくれた。
「飛鳥ちゃん、私は同じクラスだから知ってるけどぉ、神藤君達は知らないと思うよぉ?」
「え?あーそっか!ごめんごめん!十文字 飛鳥だよ。苗字嫌いだから、飛鳥って呼んで。」
「よろしく、あ、飛鳥さん。」
「えー、ウチも呼び捨てでいいから!」
「よ、よろしく、あ、飛…鳥。」
「はっ!童貞かよ。」
いや、苗字の呼び捨てと、名前の呼び捨ては全然違うぞ!あと、童貞じゃねーし!!っていうとウソになるけど…。
「じゃあ吾輩はネコって呼んで欲しいにゃ!!」
「じゃあ、私は心愛って呼んで欲しいかもぉ!!」
はいはい。猫間の事はネコって気軽に呼べそうだ。井伊野の事も名前で呼ぶのか…。どうしても照れてしまうな。タマモとテンコもそれぞれ名前で呼んで欲しいと言っている。いや、元々呼んでるよ?
だいぶ逸れてしまったのでここで話を戻す。
「ちょっとごめん。あ、飛鳥。飛鳥は能力は使えるんでしょ?」
「うん。ウチは超パワーだよ。スキル名には"超人"って書いてあるけどね。すごいパワーが出るってことくらいしか分からないかな。」
それって、もう少し鍛えれば強スキルなのでは??つまり、本当に能力が使えなくてFランクなのは俺だけってことか。ちょっと落ち込む。いや、かなり落ち込む。やはり、俺の能力の理解が最優先事項だな。奇跡で使えたんじゃダメなんだ。使いこなさないと。
「みっなさーん♪頑張っていますかー♪」
この緊張感が緩みそうな感じのしゃべり方は…。
声が聞こえた方を見ると、理事長とボディーガードの男が立っていた。理事長が授業を覗きに来るのは珍しかった。俺の知る限り初めての事だ。今日は目を瞑っている。なんで開けたり閉じたりしているんだろうか。カッコつけてるのか?って、そんな馬鹿な。
他のランクの生徒もチラホラ集まりだした。ほとんどが集まったところで、奈良先生が遅れて理事長の元へやってきた。
「これはこれは理事長。わざわざこんなところまで来ていただき、ありがとうございます。」
「いえいえ♪今日は皆さんに、あるお知らせにやって来たのですよ♪」
あるお知らせ?なんだそれは。特に変わった行事とかはないはずだが、ランク分け間違っていたとかかな?
「とりあえず、皆さんが集まったらお話ししますね♪」
そう言い、こちらを見ると、
「お久しぶりですね、神藤君♪Fランクみたいですがどうですか?能力の方は?」
「まぁ、ぼちぼちです。でも次の考査では、ちゃんと能力を使って挑みたいと思います。」
「狐ちゃん達には何か能力は無いんですかー?」
「いえ、特には…」
「そう…ですか…。まぁ、日々の鍛錬頑張ってくださいね♪」
俺の狐に興味を持ったが、何か俺の回答に府が落ちなかったのか、どこか歯切れが悪い感じだった。さっきの聞き方だと、使役した動物が能力を持っていれば、使えるってことなのかな?まぁ、そもそも動物が能力を持っている事なんて可能性は低すぎる。いずれにせよ、使役しないことには始まらないが。
気が付くと全員揃っていた。それを理事長が確認すると、
「では皆さん揃ったということで、お知らせの発表があります♪御剣から♪」
俺かよ、って顔をして、一歩前に出てきた。あれ?デジャヴかな?
「では、私から発表させていただく。皆の日々の努力に理事長が大変感激され、皆にその努力の成果を発揮できる場を提供したいとお考えになられ、この度、来月の6月にホルダー、ノーホルダー含めた"大規模スタンプラリー"を開催することが決定した。詳しい情報は追って伝える。」
「そういうこと♪」
突如告知されたその行事に、皆驚きと高揚感が隠しきれていなかった。
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