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8話 二匹の狐

閲覧ありがとうございます!拙い文ですが、お付き合いくださいませ。

 持って帰ってきてしまった。


 あの公園での出来事が、あまりにも衝撃すぎて頭が真っ白になってしまっていたが、なんとか帰ってくることができた。まだ子供なのか、それぞれ片腕で抱えられるくらいの大きさだった。


「ただいまー。」


 返事はない。なんとなく言ってしまう。


 なぜなら両親はもういない。俺が事故に合う少し前に交通事故で死んでしまったらしい。事故の影響で事故以前の記憶が曖昧になってしまっているから、悔しいが当時の事はよく覚えていない。


「腹へった!なにかくれ!」


「私も、お、おねがいします…」


 今は、ご飯をねだられていた。でも、狐って何食べるんだろ?全然分からない。そこでネットで調べてみると、キャットフードでいいらしいとわかったので、早速コンビニへ買いに行った。


 帰っている途中、無償に嬉しくなった。今まで使えなかった能力が使えたのだ。なぜ、今まで出来なかったのに、今回急に使えるようになったかは分からない。それでも、使えたことは事実なのだ。やっと一歩進めた気分だ。


 家に帰ると、家の中は見るも無惨な状態となっていた。二匹の狐が暴れ、ぐちゃぐちゃになっていた。


「お姉ちゃんのバカッ!」


「いいかげんにしろ!コノヤロー!」


「いい加減にしろはこっちのセリフだ!!ごはんあげないぞ!!!」


そう、怒鳴ると二匹はピタッと動きを止めた。


「みんなで片付けよう。ご飯はそれからな。」


 俺が散らかった部屋を片付けていると、二匹もできる範囲で手伝ってくれた。そして、餌を条件に、もう暴れないことを誓わせた。


「わるかったな、人間!」


「ご、ごめんなさい…人間。」


「その、”人間”っていうのやめないか?俺は、神藤 未蕾だ。その、に…二人は?」


 二人に名前を問いかける。


「うちは、タマモだ!!」


「私は、テンコです。」


「タマモ、テンコ、よろしくね。でもどうしてあんな所で、段ボールの中に入ってたの?」


 狐が捨てられるというのは、なかなか見ない状況だ。どうしてそんな状況になったか気になる。近くに狐かったる人は知らないし、わざわざこの辺まで捨てに来たのか?


「私達迷子になってしまって…。二人で遊んでいる時、間違って、車の荷台に乗ってしまって…」


「気づいたら、この辺りだったんだよ。帰りたいんだけど分からなくて…、ママのところに帰りたいんだよ。」


 そうだったのか。人に捨てられたわけではないんだな。でも、親を見つけると言ってもヒントがないと見つけてあげられないしな。どこから来たか分かればいいが、迷子って言ってたもんな。分かるわけ無いか。


「だから、未蕾にはママを一緒に探して欲しいんだ!」


「お願いします!」


 って、言われてもなぁ…。どこの山から来たかも分からないしな。


「いいけど、何もヒントがないから、時間かかるぞ?俺、学校もあるし。」


「ありがとう!」


「ありがとうございます!」


「とりあえず、ご飯食べようか。」


 先程買ってきた、キャットフードを容器に移し、二人の目の前に置く。ところが、首を傾げ中々食べない二人。あれ?たべれないのかな?


 二人が顔を上げると、

 

「私達、油揚げしかたべないよ。」


 そういうことは、早く言って欲しかったです。




 油揚げを買いに、またコンビニへ向かう。

 先程の公園を通ると、ふと思い出した。左手が光ったあの時、確かに能力が発動したという確信はある。だから、あの二人と話すことができると思うからだ。なら、使えるようになったのか?と、塀に止まっている雀に手をかざしてみるが、逃げられた。


 やっぱり発動しないか…。でも、何故今まで発動しなかった能力が、さっきは発動したんだ?それに、他の動物じゃ能力は発動しないので、謎が深まるばかりだ。


「さっぱりわからない…。」


 現状、俺があの二人を仲間にできたとしても、とても戦えるように見えないしな。どうせならライオンだったら良かったのに。まぁ、仲間にする前に襲われそうだけど。


 きっと、ここ日本にいる限り、俺の能力を戦闘に活かすことは難しいのかな。


 段々そう思うようになり、ネガティブな事ばかり考えてしまう。




 家に帰ると、今度は大人しく待っていた二人に、油揚げをあげる。夢中に食べる二人を見て、ついつい笑みが溢れる。家に誰かがいるっていうのは落ち着くな。


「ところで、未蕾はなんで、うちらと話せるんだ?今まで話せた人間なんていないぞ!」


「俺だって、動物と話したのは初めてだよ。能力が発動したのも初めてなのに。」


「能力?」


「そう。俺は、テイマーって能力を持っているんだけど、動物と仲良くなれる能力のはずなんだ。今まで発動したことなかったんだけど。」


 少し、二人に、分かるように噛み砕いた表現で説明をする。まぁ、この二人に話しても解決するわけじゃないしな。


「まぁいいよ!明日も学校だから早く寝よ。」


「うちらも行く!」


「え?!」


 でも、能力で仲間になってくれた訳だし、問題ないよね?何かの表紙に色々分かることもあるかもしれないし、連れて行こうか。


 そう思いながら眠りについた。




 次の日、学校へ、タマモとテンコを連れてきた。何も知らない生徒には廊下で二度見されていた。


「よっ!おはよっ!って、何それ?」


 小暮が挨拶と同時に驚いていた。その声を聞きつけて相原、伊海、音無が近づいてくる。その他のクラスメイトも遠くから好奇の目でこちらを眺めている。


「え、すっごーーい!どうしたの?この2匹の狐ちゃんは?」


 相原がタマモとテンコに興味を持ったみたいだ。3人には、昨日の出来事を話した。公園で見つけたこと。能力が発動したこと。それにより声も聞こえること。しかし、それ以降能力はやはり発動しないこと。すべてを話した。他のみんなには普通の鳴き声に聞こえるみたいだ。


「何か条件があるのかもね。」


「かわいい…」


 褒められて、照れているのか、二人はモジモジしながら静かだにしていた。


 気づけばホームルームの時間になっていたのか、泉先生が教室に入ってくる。本来はいないはずの狐がいることに驚いたのか、


「え、何?!何で狐が?!?!」


「すいません!実は…」


 昨日からの成り行きと、能力を使って行動を共にしている事を話し、連れてくることを許してもらった。席に着くと、島風さんが横目でチラチラこっちを見てくる。こっちというよりも、タマモとテンコの方だけど。島風さん動物好きなのかな?


「…かわいい。」


 はっきり聞こえなかったが、やはり気になるらしい。ここは島風さんと仲良くなれるチャンスだと思い、勇気を出す。


「お、おはよ!さわる?」


「・・・」


「おい、何勝手に話持ちかけてるんだよ!」


 はい。無視されました。なんとなく分かってましたよ。そのくせ、自分の用がある時は、いきなり話しかけてくるんだから。タマモには、怒られたがそれは無視する。


 泉先生がホームルームを進めていると、


「…昨日は大丈夫だった?」


「ふぇっ?!」


 ほらね。もう慣れました。いつもいつも急なんだから、もう。

 

「気絶はしたけど、大丈夫。ホントに手加減してくれなったね、ハハっ。」


「弱いから悪いのよ。」


 はい。返す言葉がありません。そのまま島風さんとの会話は終わった。島風さんと仲良くなるのは、まだまだ先が長い。


 俺の傍らにいるタマモとテンコを見る。7月にある学期末考査で評価を得なければならない。この二人が協力してくれるのが一番だけど、それまでに母親が見つかってしまうと、それは難しいだろう。すると、少し先が不安な展開になる。来週の結果待ちの身ではあるが、おそらく一番下のランクだ。それでも、一歩一歩のし上がっていくしかない。だから、学期末考査で躓くわけにいかないのだ。


 それに、あきらめかけてた俺の心を支えていたのは、能力が発動したことだった。したことあるのと、ないのでは行ってくるほど違うのだ。その点はこの二人には、もう十分な手伝いをしてもらっていると言っても過言ではない。

あの日公園に立ち寄って良かったと、心からそう思った。ありがとう。




 日も沈み、理事長室では、神崎が今日1日の報告を御剣から聞いている所だった。主に問題行動や、何か変わったことが学校で起こると、どんな些細な事でも理事長まで報告が上がることになっている。

 そして、今日報告されることはもちろん、神藤の連れてきた狐についての報告が一番大きな内容になっている。


「神藤君、能力で狐を使役し始めたと報告が上がっています。考査では能力を使っていませんでしたが、考査結果前にこの事が分かった為、結果に影響するのでは、と報告が上がってます。」


「そんな…そんなはずないわ。普通に生きていたら彼の能力は…、それとも、その狐に秘密があるのかしら。」


 少し驚き、何か信じられないような反応をしていた。何か確信を持って否定している様子だ。口元に手を添えながら少し考えていると、フッと笑い、


「そういうことね。面白いことになってきたわね。神藤君の動向を先生方に少し注目させておいてね。」


「わかりました。」


「それと、この事で考査の結果は変えるつもりはありませんからね。考査の時に実力を発揮できなかった、それもまた彼らの実力ということですから。」


 神藤の能力の名前を知っているからこそありえない、と思ってしまう神崎だが、連れていることも事実。もし、発動していてもそれは、戦力になるのだから、それもまた好し。


――すべては私のために。

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