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2話 入学式

閲覧ありがとうございます!最終話まである程度構想は練っていますが、仕事をしながら書いていて、自分で添削してから投稿するとなると・・・ですが、なるべく高頻度に追加できるように頑張ります!長くなってしましましたが、最後まで読んでいただけると嬉しいです!!

 満開の桜。ウグイスの歌声。賑やかな生徒たちの声。時々吹く心地よい風。


 そのすべてが、まるで、俺を祝福するかの様に、美しく感じる。


 少し早く能力を手にした俺は、少しでも能力を使いこなし、入学したらいきなり無双する。


 そして俺の圧倒的な力に憧れ、心許せる親友、たくさんの友達、そして、女子からモテモテの完全なる高校デビューを果たす。



 はずだった・・・


 甘かった。考えが甘すぎた。俺は全身骨折をしていたのだ。到底2週間で退院なんてできる訳もなく、入学式は欠席になった。


「俺の高校デビューが・・・」


 それでも、1ヶ月で退院できたのは、異例の早さだと先生も驚いていた。


 退院してからは、リハビリもかねて自分の能力を色々試していた。テイマーというからには動物を使役できるのだろうと推察したうえで、2週間、野良犬やカラスなど、蟻といった昆虫にまで試してみた。そして分かったことがある。


 能力が()()()()()()()


 訳が分からない。発動条件も分からなければ、どんな動物にも発動しないのだ。動物園に行ってまで試したのに、収穫はなしだった。どうすればいいか分からず、ただただ時間ばかりがすぎていき・・・


 時は五月。ついに登校日が来てしまった。


 今日は俺だけの入学式が行われることになっている。学校への道中も思い描いていたものとかけ離れていた。


 桜なんて見る影もなく。聞こえるのはカラスの鳴き声だし、生ぬるい風に揺れる近くの公園の雑木林には、捨て猫らしきダンボールも捨ててあるし、学校前につくも、学校は授業中だから静かなものだった。

 普段とあまり変わらないその光景は、夢にまで見た高校デビューが無残にも散った俺を嘲笑うかのようだった。


「完全に出遅れた・・・。というか、学生にとっては手遅れでは?あー、さっきの捨て猫拾ってYouTuberにでもなろうかな・・・」


 現実逃避をすることに決めた俺は、くだらない妄想をしつつ、入学式会場を探しに歩いた。




「それにしても広いな」


 広くてなかなか入り口が見つからなかった。なんとか案内掲示板を見つけると、校舎について色々書いてある。


 それによると、エントランスらしき場所から奥に校舎が続いている。そこから3棟に分かれていて、それぞれのクラスがある学生棟、能力育成のための訓練所やトレーニング施設のある訓練棟、そして特別授業で使う部屋や、保健室といった部屋のある特別棟がある。学生棟から続く後方には、理事長がいる理事棟がある。そして、特別棟から渡り廊下で接続されたところに体育館がある。職員室はエントランスエリアにあるらしい。


 エントランスへ向かうと、そこには受付嬢らしき人がいた。


「すみません。今日から登校することになった神藤しんどう 未蕾みらいなんですけど・・・」


「こんにちは。神藤さんですね、お待ちしておりました。ご案内いたしますね。」


 そういわれ、後をついていくことになった。職員室へは入らず、どんどん奥へ進んでいく。


「あのー?職員室へ行かないんですか?」


「入学式は理事棟で行われますので。」


「なるほど。」


 理事棟へ向かう途中、学生棟を通った。今は授業中らしく、集中しているものもいれば、隠れて携帯をいじってるものもいた。


 なんだ、能力育成を掲げている学校だから、どんな奴らがいるのかと思ったが、みんな普通の学生じゃん。などと思っていると、受付嬢が口を開いた。


「1階は1年生のフロアになっていますので、神藤さんもこのフロアに通うことになりますよ。学年が上がるごとにフロアが上がっていきますので、段々と景色がよくなっていくのいいですよね。」


「なるほど。」


 さっきから俺、なるほどとしか、言ってないな。と思いつつ、教室のほうからは、いくつかの視線を感じる。転校生とでも思われているのだろうか。残念、ただの出遅れです。


 歩いていると理事棟の前についた。セキュリティがかけられているらしく、受付の人がインターホン越しに何かしゃべっている。


「では神藤さん、中へ。」


 そう促されて中へ入ると、広間に二人立っていた。

 クリームがかった、ふんわりとした腰まで届いている長い髪が印象の、ずっと目を閉じている女性と、隣にスーツを着た目つきが鋭く、腰には帯刀している、ボディーガード風な男が立っていた。


「ようこそ♪入学おめでとう、神藤君♪この学校の理事長を務めています、神崎 麗奈です♪隣りにいるのは、ボディーガードの御剣 征四郎君です♪体の方はもう大丈夫なのかな?」


「はい。すっかり回復しました。」


 身長150cmくらいの子供じゃないかと言うような風貌の女性だ。

 すると、ニコニコしていた表情が少し曇ると、俺の表情に出ていたのか、


「よかった♪それと、私はこう見えても22歳ですよ?安心してください♪」


「は、はい!」


 何を安心すればいいのか分からないが、少し陽気な方のようだ。


「さて、進藤くん!さっそく理事長の私から、ありがたーーいお言葉があるので聞いてくださいね♪」


 いよいよ入学式が始まるのか。簡易的にでも、わざわざ式をしてくれるのはありがたい。


「君 に 幸 あ れ ! !」


 ・ ・ ・ ん?終わり??


「お、終わりですか?」


「はい♪かたっ苦しく、ながぁーーい話なんて退屈でしょ?まぁ、軽く学園について説明はしますね♪御剣が♪」


 隣で、俺かよ。って顔をしながら説明を始めた。


「この学校では、能力が発現した人と発言しなかった人がいます。これをホルダーとノーホルダーと呼んでいます。両者が一緒に受ける必修科目と、ノーホルダーは選択授業、ホルダーは政府が発行する能力育成プログラムを行う才能別授業があります。」


 能力があるものをホルダー、ないものをノーホルダーと呼んでいるのか。それと、育成プログラムってなんだ?説明書みたいなものがあるならもっと早く知りたかった。


「育成プログラムは政府が作ったマニュアル通りに行われますので、授業中は皆等しい教育を受けることになります。

 そして、各学期ごとに考査が入りますので怠けず、がんばってください。」


「すいません。考査っていつあるんですか?」


「各学期ごとに1回ですが、1学期だけ中間考査があります。ちなみに2週間後です。」


 え?すぐじゃん・・・入学して、早々に考査があるのか。何も教わってないよ、俺。


「明日からの授業で、自分の能力の説明を受けられる感じですか?」


「考査2週間前は通常先生サポートによる自主練期間となっております。今もその期間なので、進藤さんもがんばってください。」


 えーー!、何も教わってないのにいきなり自主練は無いだろ・・・。と思っていると、助け舟を理事長がくれた。


「でもでもぉー、進藤くんは入学遅れたから、希望するなら担当の先生に頼んで特別授業やってもらいますかー?」


「ぜひ!おねがいします!!」


「わかりました♪そのように手続きしておきますね♪それでは最後に能力見せてください♪」


「え?見せるんですか?」


「はい♪()()()()の皆さんに見せてもらってるので♪」


 そんなこと言われても発動しないのだ。見せたくても見せられない。逆に見せてほしいくらいだ。


「すいません。能力発動できなくて・・・」


「あらら。でも、能力の名前だけでもいいですよ?」


 そう言われ、左手に念を込めて名前を浮かび上がらせると、理事長が今まで閉じていた目を開いた。吸い込まれてしまうくらい綺麗な金色こんじきの瞳がこちらを見つめていた。不覚にもドキドキしてしまったくらい美しかった。


「て、テイマーって能力です。何か知ってますか?全然発動できなくて悩んでいます。」


「ん~知らないですねぇ~。いろいろ試してみるといいかもですね♪では、今日は帰って、ゆっくり休んでください♪明日からの学校生活楽しんでくださいね♪」


 何やら急に興味がなくなったのか、これで入学式は終わったらしい。


「はい。ありがとうございました。失礼します。」


 そういって、部屋を後にすると、先ほどの受付の人が待っていた。促されるように一緒にエントランスへ向かう。


「それでは、明日は一度職員室へ寄ってから、担任の先生と教室へ行きましょう。神藤さんのクラスは5クラスの内の3組になります。ぜひ、学生生活楽しんでくださいね。今日はお疲れさまでした。」


「お疲れさまでした。」


 もう、手遅れですけど。という言葉は飲み込んだ。

 それでも、明日からの生活が怖くもあり、楽しみでもあった。今日は早く帰って明日の準備をすることにした。




 入学式会場に残された二人は、しばらく彼が去っていった扉を眺めていた。驚異の回復能力と聞いて期待していたが、残念な結果となってしまった。能力が使えないとは、論外である。


「テイマーですか。あまり使えなさそうですね。場面が限定すぎるし、そもそも発動しないとは。話にならない。」


「まぁいいですわ。回復スピードのこと聞いていたので少しだけ期待してましたが、構いません。有能な能力は他にもありましたから。」


 先ほどの雰囲気とは違い、陽気な明るい少女のような彼女はそこにはいなかった。何か覚悟のような、決意のこもった、鋭い金色の瞳で遠くを見つめていた。


「私の計画の邪魔にならなければ、何でもいいですわ。いきましょ。」


 そうして、二人は広間から去った。

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