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1 王国追放

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「君はクビだ、フレイ・リディア」


 内務大臣に呼び出された俺は、いきなり宣告された。


「この国に七人いる宮廷魔術師のうち、君の成果だけがあまりにも低い。我がキラル王国は世界に名だたる魔法先進国だ。君のような無能を置いておくわけにはいかんな」

「成果が低いって……この間の魔獣掃討戦では、私の討伐数は他の六人の十倍くらいありましたよね?」

「なんの話だ? 他の者たちの報告によれば、君の討伐数が一番低いことになっているぞ」

「そんな馬鹿な!」


 むしろ、俺が六人のカバーをしていたくらいだ。

 言っては悪いが、彼らの働きぶりはかなり怠惰だった。


 やるべき職務を平気で放り出し、昼から酒場に繰り出したり。

 魔物の討伐任務を適当な理由をつけてサボったり。

 他にも部下へのセクハラや賄賂の収受など、あきらかに職務規定に違反している者もいる。


 なのに、なぜ俺のほうが糾弾されなければいけないんだ。


「そうそう、思い出した」


 大臣がニヤリと笑った。


「メルティナ殿下はお前を高く評価しておられるそうだな。きっと残念がられることだろう」

「何を、急に……?」

「ただ、殿下は第二王女でありながら、第一王子のアンドリュー殿下を差し置いて王座を狙っている、という噂もある。そのための右腕としてフレイ・リディアと親しくしている、ともな」


 まさか、大臣の考えは──。


「お前がいなくなれば、メルティナ殿下にとっても痛手であろう。第一王子アンドリュー殿下の次期王位は揺るがぬ……くくく」

「あの方の力を削ぐために、私を……?」


 大臣はアンドリュー殿下と親交があるから、王位争いの援護射撃のつもりで俺の追放を企てた……なんてのは考えすぎだろうか。

 いや、おそらくは……事実だ。


「言いがかりはよしてもらおうか。これは王命である」

「王がそんなことを――」


 おそらく大臣が手を回したんだろう。

 そこまでして、俺を追い出したいとは。


「我が国の看板に泥を塗った罪は重いぞ、フレイ。この国を出て行ってもらおう」

「……異議申し立ては可能か?」

「王命だと言っただろう。それに、大臣たちの会議でも承認されている」


 自分でも不思議なほど、反抗する気力がわいてこない。


 怒りよりも、諦めや無力感の方が大きかった。


「二日の猶予を与えよう。その間に国を出ていくがよい」




 呆然としたまま自宅に戻った俺は、十年前のことを思い出していた。


「今日からお前が一族の当主だ、フレイ」


 病床の父から、俺はそう告げられた。

 この時、俺はまだ十五歳になったばかり。


「俺が……当主……!?」

「魔導一族リディア──その始祖は歴史上の英霊1000体を使い魔として従え、最強を誇った。そしてその1000体の英霊は代々の当主に受け継がれてきた……」


 父が告げる。


「当主になれば……歴史上最強最高の力を持つ英霊たちは、状況に応じて自動的に召喚される……」

「自動的……?」

「お前が何もしなくても、英霊たちがあらゆる出来事に……対処してくれるだろう……お前は指一本動かすことなく、最強の存在となる……」


 俺はごくりと喉を鳴らした。


「だが、心せよ。力をみだりに使うな。多くの英霊を一度に使えば、魔力の消耗量も大きくなる。自分で制御できる範囲にとどめるのだ」

「……分かりました」

「そして、何よりも――」


 父の目に寂しげな光が宿った。


「強すぎる力は周囲との断絶を呼ぶ……我ら一族は近年、その圧倒的な能力を人前では極力使わず、平穏に過ごしてきた……」

「表向きは凡庸な魔法使いとして生きろ、と?」

「そうだ。できるか、フレイ……」

「俺は……平穏に生きたいですから」


 父にうなずく俺。


「なります。最強の使い魔を従える、平凡な魔法使いに」

「ならば──今からお前に私の持つ『当主の証』を授けよう──」


 父の言葉とともに、俺の周囲に無数の光球が浮かび上がった。

「これは──」

「リディア一族が従えてきた英霊たち……一体一体が国一つを滅ぼせるほどの力を持っている……今より、彼ら1000体は全員お前の『使い魔』だ」




 ──その日、俺は最強の力を手にした。

 そして、父の言葉通り力を隠して平凡に生きてきた。


 それから、十年。


「平凡に生きても……他人と衝突しないように心がけても……結局、こんな結末なのか……」


 ため息をつく。


 だが、いつまでも落ちこんでいられない。

 これから先のことを考えなければ。


「【全自動・英霊召喚】──各種自動召喚条件を表示」


 呪言とともに、前方に光る文字の羅列が現れた。


──────────────────────

自動召喚条件


・敵襲/人間……自動行動OFF:マスターの指示に従う

・敵襲/モンスター……自動行動OFF:マスターの指示に従う

・異変察知/外敵……自動行動OFF:マスターの指示に従う

・異変察知/環境……自動行動OFF:マスターの指示に従う

・状態異常/マスター……自動行動OFF:マスターの指示に従う

・状態異常/他者……自動行動OFF:マスターの指示に従う

・移動……自動行動OFF:マスターの指示に従う


──────────────────────


「今までは自動召喚をほとんどOFFにしてたけど……もう遠慮することはないし、とりあえずONに変えておくか」


 文字列を見ながら思案する俺。


──────────────────────

自動召喚条件


・敵襲/人間……自動行動ON:防衛

・敵襲/モンスター……自動行動ON:撃破

・異変察知/外敵……自動行動ON:索敵

・異変察知/環境……自動行動ON:鑑定

・状態異常/マスター……自動行動ON:治癒

・状態異常/他者……自動行動ON:治癒

・移動……自動行動OFF:マスターの指示に従う


──────────────────────


「移動だけはOFFにしておこう。後は──再就職できたら、その国の流儀に従ってまた考えればいい」


 俺は文字の羅列をいったん消した。


 同時に、俺の周囲に無数の光球が浮かび上がる。


 それらは──俺が従える1000体の使い魔たちを封じたもの。

 そのすべてが最強レベルの力を持つ英霊たちだ。


「やれやれ、追放されるとは。我が主ともあろう者が情けない」


 光球の中に映っている紫色のドレス姿の美女──『至高の魔術師メーヴェ』がため息をついた。


「生意気な大臣だったな。お前が許可をくれれば、俺様がぶっ飛ばしてきてやったのに」


 別の光球の中の、身長三メートル近いフルプレートアーマーの巨漢──『破砕騎士ゴル』が吠えた。


「ぶっ飛ばすなんて野蛮な英霊ね……もっとジワジワといたぶるように地獄の苦しみを味わわせてやった方がいいわよ。このあたしがやってあげるわ……くくく」


 また別の光球に浮かぶ半裸の美少女──『千の呪殺ミルリ』が笑う。


 その他の光球からも一様に不満げな声が聞こえた。


 光球の中に宿っているのは、いずれもクラスAやSの英霊たちだ。

 彼らの誰か一人でも召喚すれば――そして、俺がその気になれば、大臣だろうと貴族だろうと即座にぶっ飛ばせるだろう。


 報復は、たやすい。


 だけど――。


「いや、いいんだ」


 俺は力なく首を振った。


 巨大すぎる力は他者との衝突を生み、争いを産み、やがて自分自身の居場所を失う――。


 父から何度も何度も聞かされた言葉。


 実際、そうやって七代前の当主は当時仕えていた国を追われたらしい。

 その後にやって来たのがキラル王国だという話だった。


 で、俺は力をできるだけ隠して生きてきた。


「その結果……結局俺も七代前と同じ国外追放になったわけか。笑えない話だ」


 俺は自嘲気味につぶやいた。


 りいいいん。


 そのとき、呼び鈴が鳴った。


 誰かが家を訪ねてきたようだ。

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― 新着の感想 ―
エピソード1を読ませていただきました。面白いです。書籍とコミックになっているということで、おめでとうございます。それなら私は買わせていただくべきだろうと思い、コミックを買わせていただきました。これから…
[気になる点] いや、周りが怠惰とはいえそれを叱責せずに自分だけ真面目に人の10倍も討伐しちゃって(そんなだから周りはそれに頼ってもっと怠惰になると思う)、第二王女と懇意にしてるのが周囲にバレバレなん…
[一言] ぼちぼち被らない様に英霊だしてください 考えるのが大変そうですが!
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