第2話 違法コロシアム2
ルサとザキトは、実行許可を得て速攻に客席から離れる。バレないようリングの裏側に潜り込み、点いている照明を全て消した。
会場は突然暗闇になり、観客は「なんだ!?」、「停電か!?」と騒ぎ始める。もちろん、この『違法コロシアム』を開催している主催者たちや試合途中のゲシュヴィスターたちも何が起きているのか分からず、戸惑う。
主催者側は、とりあえず照明が点くまで二体のゲシュヴィスターをゲートに戻すように誘導し、観客には「トラブルが起きたため、しばらくお待ちください」とアナウンスをかけていく。
「ふっざけんな! こっちは金を賭けてるんだぞ!!」
「今いいところだったのに!! 早く再開しろ!!」
アナウンスを聞いた観客からの罵声が会場に響き渡る。
そんな彼らを沈めさせるためにアナウンスを再び流そうとした時、「ドッカァアアン!!」と爆発音が会場に響き渡り、会場にいた者たちはあまりの音に耳を塞ぐ。
そして、この会場のあらゆる扉から防護服(ゲシュヴィスターに攻撃されても対応できる武装)を着用した人間と武装アームを身に着けているゲシュヴィスターたち『ガルディアン部隊』が突入する。
「我々はガルディアン部隊だ! 今から貴様らを強要罪及び賭博罪の罪で捕縛する!」
「かかれぇぇぇ!!」
ガルディアン部隊内で形成されてる六部隊のうちの一部隊『ガルディアン突入部隊』が次々と会場に突入していき、悲鳴を上げている観客たちとこの違法コロシアムの主催者たちを取り押さえていく。
そんな中、ルサたちはリング上にいたゲシュヴィスターたちが戻って行ったゲートの奥に続いている通路に沿い、道の途中に待機していたスーツの男たちを撃退しながら先を進んでいく。
ルサたちの役目は裏街で売買され、違法コロシアムの剣闘士として同房を殺し合わされているゲシュヴィスターたちを見つけ出し、外で待機している別部隊に連絡し、保護することである。
「しっかし、随分と奥が深いようだね」
「全然ゲシュヴィスター達いないですしね」
「やっぱり、この奥にある収納倉庫に剣闘士のゲシュヴィスターたちがいるんだと思います」
三人は周りを警戒しながら進み、一番奥にある収納倉庫にたどり着く。
収納倉庫には電子ロックがかかっており、パスワードがなければ開かないシステムになっているが、三人が収納倉庫に着いたのと同時に電子ロックが解除された。
「さすが、チャミだな。タイミングばっちりだ」
「なんたってあいつは、ハッカーの天才ですからね」
「そうだな」
ルサは、ミカエルとザキトがガルディアン本部で仕事をしている仲間のことを誇らしげに話しているのを聞きながら、扉を開ける。
そして、そこには、数十個ある牢屋に一体ずつ剣闘士のゲシュヴィスターたちが収容されていた。ミカエルは、瞬時に状況を確認し、外で待機している別部隊に無線を繋げる。
「こちらミカエル。剣闘士のゲシュヴィスターたちを見つけた。調べた通り、ゲート奥にある収納倉庫だ。今すぐこちらに部隊を送ってくれ」
『了解した』
『こちら、ガルディアン突入部隊。容疑者らを確保した。これから本部に連行する』
「了解」
外で待機している部隊との無線のあとに突入部隊から現状報告を聞き終え、ゲシュヴィスターたちの状態を確認していく。
牢の中にいる剣闘士のゲシュヴィスターたちは皆、コロシアムで戦闘をしていたからだろう。傷という傷はないが、どこもかしこも修理された形跡が残っていた。
そして、首元には無理やり埋め込まれたであろうマイクロチップのようなものと両足には足枷が付いている。
「首元にあるチップは電流が流れるやつだね。そして、この足枷は…もしかして爆弾かな?」
「そうだと思います。マイクロチップは命令に背いた時に高電圧を流すように組み込まれてるのかもしれないです。足枷はゲシュヴィスター自身には力がありますから、この程度のなら自力で壊すことが可能ですが…それを壊さず、ここにいるということは、壊した際と逃げた際にセンサーが反応して爆発する仕掛けになっているのかもしれません」
「そんで、逃げるための足がなくなって動けなくなったところを捕まえ、またここに戻されるってわけか。やることが外道だな」
三人が牢の中にいる剣闘士のゲシュヴィスターたちを見つめながら会話をしていると、一体のゲシュヴィスターが話しかけてくる。
「…あんたら、何者だ? ここの奴らじゃ、ねぇーのか?」
話しかけてきたゲシュヴィスターは怪訝そうな顔でルサたちのことを見やる。そんなゲシュヴィスターの質問にルサが答える。
「私たちはガルディアン部隊よ。あなたたちを救出し、保護するために来た」
ルサの言葉にゲシュヴィスターたちがオプティックを見開く。
「ガルディアンって、あの?」
「じゃ、じゃあ、俺たち。助かるのか? もう、同房と殺し合わずに……死なずに済むのか?」
「そうだよ。もう殺すことも死を恐れることもない。みんな、生きられる」
「だから、安心して」とルサが安心させるように答えると、ゲシュヴィスターたちは唖然としていたが、徐々に喜びの声やすすり泣く声が収納倉庫中に響き渡った。
「俺たち、助かるぞ! 助かるんだ!」
「生きれるんだ、生きていけるんだ!」
「……やっと、この地獄から解放されるっ」
そんな彼らの姿を目にしながら、ルサたちはやさしく微笑む。しかし、ルサがあることに気が付く。
「…いない」
「ん? 何がだ?」とルサの声に反応したザキトは疑問を呟く。
「一人、いない。さっきの試合に出てた、赤コーナーのゲシュヴィスターがいない」
「なんだと?」
三人は元々調査していた剣闘士のゲシュヴィスターの人数を確かめていく。