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ガルディアン  作者: 桜猫
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第1話 違法コロシアム1

小説または脚本を書きます(ご理解とご協力お願いいたします)

「カンカンッ」とゴングの音が鳴り響く。


 マイクを持った一人の男がリングの真ん中に立ち、「winner!イレブゥゥゥゥン!!」と叫ぶ声が試合会場中に響き渡る。そして、試合会場はリングの周りの観客席にいる男女の喜び、また、悔しそうな声で賑わい始める。


 ここは、ビル地下で行われている「違法コロシアム」の会場。ゲシュヴィスター同士を戦わせ、どちらかが倒れ、死ぬまで行われ、観客である者たちは、どちらが生き残るのかをお金を賭け、競い合い、娯楽として楽しんでいる。


 そして、今、今宵の第一試合が終わり、次の試合の準備が行われようとしていた。そんな頃に、黒色のマントに身を包んだ二人の人物がコロシアムに訪れる。


「二人だ」

「チケットを」


 二人の訪問者は、試合会場の入り口に立つ黒のスーツを着ている男に二枚のチケットを渡し、確認されたのち、中に通される。


「どうぞ」

「ありがとうさん」


 中に入ると、先程まで戦い、ゲシュヴィスターの傷口から流れたであろうオイルがリング状に広まっており、オイル独特の匂いが会場に充満していた。

 その匂いに、少し背の低い黒マントの人物が「オイル臭い……」と利き手で鼻を覆い、呟く。

 その呟きを聞いているもう一人の黒マントの人物は「いいか。前みたいに暴走だけはしないでくれよ」と少し強めに相手に注意をしたが、注意された方は耳にタコと言わんばかりの表情で返事をする。


「わかってる」

「いいや、お前は人の目を見ないで『わかってる』と答える時はわかってない」

「そう?」

「そうだ! 何回、俺がお前の突拍子のない行動を見てきたと思ってんだ!」


 黒マントの二人が騒がしく話していると、彼らが耳に身に着けていた通信機から無線が鳴り響く。そして、二人は素早くその無線を繋げた。すると、低音ボイスの声が耳に響く。


『こらこら、二人とも。そんなに騒いでいては気づかれてしまうかもしれないから静かにね?』

「「すみません」」

『まぁ、元気があるってことでよしとして、無理はしないように。何かあれば、すぐに連絡しなさい』


 二人の通信機に連絡をしてきたのは、二人の位置とは違う客席に身を潜めている男からだった。


『あと、ルサ。ザキトが言っていたように、勝手な真似はしないようにね』

「……善処します」

「いや、そこは『了解しました』だろ」


 黒マントの一人である『ザキト』という男が、隣にいるもう一人の黒マントの人物である『ルサ』という女性にツッコむ。

 そんな二人の様子を遠目から見ていた無線の男は、笑いながら無線を切り、再び周りに密かに溶け込む。


 そして丁度、無線が終わったのと同時に会場の照明が一旦落とされ、静寂な暗闇の世界へと一変する。それから、パンッとリングだけが照明に照らされ、そこには先程と同じ、マイクを持った男が立っていた。


「皆様、お待たせいたしました。今宵の第二試合を開幕いたします! まず赤コーナー──ナンバー4! そして青コーナー──ナンバー9!」


 マイクを持った男は、大声で叫びながら左右にあるゲートを左から右へと手を向け、これから戦闘を始めるゲシュヴィスターたちがゲートを潜り抜け登場する。

二体のゲシュヴィスターがリングに現れた途端、会場が歓声で埋め尽くす。そして、会場にいたスーツの男たちが赤と青の札を持ち、観客が選んだ方の札を渡していく。そして、ルサとザキトの元にも二色の札を持ったスーツの男が近寄り、どちらに賭けるのかを訊いてくる。


「これって、選んだ色の方のゲシュヴィスターに賭けるってことだよな? じゃ、俺は青で」


 札を選んだザキトにスーツの男は青の札を渡す。

 そして、隣に座っているルサに「あなたは?」と、尋ねた。


「…」


 しかし、ルサはどちらとも答えず、ただずっと、リングに登場したゲシュヴィスターたちを見つめている。


「あの、どちらの札に──」

「あー、すみませんね。こいつ、こういうの慣れてなくて。赤でいいよな?」


 ザキトはリング状を見つめているルサに訊き、ルサはそのままの状態で軽く頷く。そして、スーツの男はルサの札をザキトに渡し、二人の傍を離れていく。

ザキトはルサの方をチラッと見て、ため息を零す。そして、観客全員に札を配り終わったのだろう。スーツの男たちは観客席から退場していき、マイクを持った男が再び喋り始めた。


「さてさて、皆様。それぞれが選んだ札に後悔が無いよう、今宵の第二試合をお楽しみください。それでは、ナンバー4VSナンバー9──Lady fight!!」


 「カンッ」とコングの音が鳴り、二体のゲシュヴィスターが戦闘を始める。


 『ナンバー4』と量産機のような名前をつけられている赤コーナーのゲシュヴィスターは、ナイフを持ち、同じく『ナンバー9』と名付けられている青コーナーのゲシュヴィスターは、ハンマーを持ちながら相手に攻撃をしていく。観客席からはそれぞれが賭けたゲシュヴィスターのナンバー、または、色を叫びながら試合を見守っていた。


「赤! 脇腹狙っちまえ!!」

「9! 追い込め、追い込め!」


 二体のゲシュヴィスターは互いに相手に傷つけられ、オイルが飛び散り、体全体が傷とオイルだらけになる。

 そんな光景をルサたちは無言で眺めていた。


「これは、ひどいな……」

「……」


 ザキトはえげつない光景に気分を悪くさせた。一方、ルサはその試合を腸が煮えくり返る思いで見ており、その瞳には怒りを露わにしていた。


 そんなルサの瞳がふと、リングで戦闘している赤コーナーのゲシュヴィスター『ナンバー4』のオプティック(ひとみ)と混じり合う。なぜ、目が合ったのかは分からない。たぶん、たまたま合ったのだろう。赤コーナーのゲシュヴィスターはバトルマスクを着けているため、はっきりとした表情は分からなかった。


 しかし、ルサは嘆き苦しみ、必死に耐えているゲシュヴィスターのオプティック(ひとみ)を直視したことで、今まで黙って我慢していた思いが溢れ出してしまい、観客席から立ち上がる。周りの観客は試合に集中し、興奮のあまり立ち上がっている者もいるため、ルサのことを不審には思うこともなく、気がついてもいない。

唯一、気づいたザキトがルサに声をかける。


「ルサ?」

「──もう、我慢できない……ミカエルさん。実行の許可をください」


 ルサは、先程無線を入れてきた男──二人の上官である『ミカエル』に無線を繋げ、前もって立てた作戦の実行許可を得ようとしていた。


『……まだ、許可を取りに連絡してきただけでもいいとするか』


 ルサからの無線に出たミカエルは『やれやれ』と呟き、ルサに実行許可を出す。そして、他に潜んでいた者たちにも無線で作戦を実行することを伝え、皆が一斉に動き出す。


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