妊活をするあなたへ
結婚して健康で、夫婦仲が普通であれば、三年くらいで子供ができる。
これは、確率論的なお話。
命というのは、非常に気まぐれなもので、望みもしていないのに、子をなすこともあれば、望んでも望んでもえられない、そんな夫婦も数多いです。私も、かつて、そんなひとりでした。
世の中には、妊活、というものを嫌い、ひたすら自然に、という方もいらっしゃって。
命ですから。高度医療で人工的にというのを極度に嫌がるのもわからなくはないです。
ただ、そういう方が『夫婦仲よくしていれば、赤ちゃんなんて自然にできる。仲良くするのが一番大事』なんてことを言われたりすると、『自然にできないから、仲が冷えるのよ!』と言いたくなります。
こどもを授かるということへの、女性への世間のプレッシャーは未だ大きく、かつ、負担も非常に大きいものです。
まず、産婦人科の門をくぐるのが、辛い。
そして、治療を始めた場合、定期的に『病気でもないのに』通院しなくてはいけない。
排卵誘発剤などを飲んだり、ホルモン剤の注射(すげー痛い)をしたり。
で、何より辛いのが、一か月に一度のチャンスだけで、しかも結果がすぐに出ない。
妊活の失敗のショックと、生理痛のダブルパンチ。
夫が協力的だった私でも相当につらかったです。
精神的なダメージもあるし、保険がききませんから、医療費は自己負担。経済的にもしんどいです。
かつて。私が妊活を決意したとき。
無知な私は、どこの病院に行くのか、それすらわからない状態でした。
そんな私が、アドバイスをするとしたら。
最近は高度医療(体外受精以上が普通)の補助金を回数制限ではありますが出している自治体が非常に多いです。
おすまいの自治体(県、あるいは市町村)に問い合わせてみると、補助金申請が可能な『産婦人科医』というのがわかります。
つまり、高度医療可能な病院です。
もちろん、最初から、高度医療を、というのは抵抗があるでしょうが、高度医療のできる病院というのは、専門医がいます。
心のケアも含めて、適切なアドバイスもしてもらえます。
ぜひ、できれば、最初から専門医を選んでください。
たまに、医師が男性か女性かということを、非常に気にされるかたがいらっしゃいます。
私の経験から言えば、『女性の医師ならわかってもらえる』とは限りません。
結局は、ひとそれぞれ。医師によりけり。
男性の医師のほうが、『わからないからこそ、優しく親身になってもらえる」こともあります。
たいせつなのは、その病院がどれだけ不妊の治療に力を入れているか、ということ。
あたりまえですが、患者の扱い方が違いますから。
私の場合は、完全に『健康』ではなく、子宮内膜症がありました。
子宮内膜症は、不妊の原因でもありますが、妊娠できないというわけでもなく、また、程度にはよりますが、命にかかわることはめったになく、治療の緊急性の低い病気であります。
この治療は、基本は、手術であります。
高度医療というものに抵抗があり、かつ、手術することにも抵抗があった私は、4年ほど普通の産婦人科で不妊治療をしました。
もちろん。
世の中には、子供を作ることを最初から断念せざる得ない人たちがいます。
それに、比べれば、希望があり幸せな立場で、当時の私もそれは理解していました。
しかし、希望があるということは、ある意味では残酷でもあります。
毎月、祈りながらの治療は、静かに私をむしばみました。
当時の私は、赤子を見るのもつらく、産婦人科で、妊婦さんと一緒の待合室は、地獄。
子育ての悩みを人から聞いても、自慢のように聞こえました。
子供が走り回る声さえ、つらかった。
でも、自分の感覚がおかしいとは思っていなかったのです。
しかし。
ある日、友人から『子供が生まれました』のメールをもらい……それに「おめでとう」とメールすら返せない自分に気が付いた時。
私は、ようやく、自分が追い詰められているということを知りました。
そして、子宮内膜症の手術を決意して。その後、高度医療の手を借りて幸いにも二年後に娘を得ることができました。
そんな私が思うこと。
どうか、子供のいない夫婦がいても、『子供はまだ?』と無責任に問いかけないでください。
その言葉が、どれほど胸に刺さるか、たぶん言っている人は気が付いていないと思います。
そして。
『仲が良すぎると、子供ができないというよね』
これは、全然、慰めにはなりません。
仲が良い夫婦だから、離婚しないだけです。それだけのことなのです。
子供がいても離婚する夫婦はいるし、子供がいなくても生涯添い遂げる夫婦もいる──それが、現実なのですから。
そして。
今、妊活で苦しい思いをなさっている方へ。
世の中というのは、不条理。
私の言葉も所詮『得られた側』の意見であることは承知ですが。
必ず、夫婦で、支えあってください。相談もいっぱいしてください。
旦那様も『子供なんていなくてもいいよ』というセリフは、たとえ本心でも、言われた奥さまにとって、慰めにならないこともあります。優しさをうけとめられないほどに、心の負担の大きい治療だということを理解してあげてください。
そして、そんな奥さまに気づかれたら、子供がいてもいなくても、奥様の価値は変わらないと伝えてあげてください。
奥さまの産みたい気持ちを否定せず。でも、そのままの奥さまを肯定してあげてください。
旦那様もお辛いでしょう。
でも、不妊治療は肉体的にもつらく、精神的なダメージも大きいものです。
もし、あなたが、妊活を始めるのであれば。
できれば、妊活期間を決めましょう。
それを過ぎたら、なにもしない──そう決めることも大事です。
期限のない戦いは、終わりのない戦いとなり、それこそ逃げ場がなくなります。
子を授かることをゴールに据えてしまってはいけません。
自分を見失わないで、追い詰めないでください。
幸せを得るために、不幸になっては本末転倒です。
最後に。
良い知らせが、あなたにも訪れることを心からお祈り申し上げます。