2.根性無しのパープルヘイズ
一目惚れだった。
この高校に入って本当によかったと思う。
入学してからしばらくたったある日の昼休み、図書室で黄昏ている彼女を見て一発KOだった。
儚げで人を寄せ付けない彼女。
人との関わりを拒絶する彼女。
気づけば彼女の事ばかり考えていた。
だがそんな彼女に対する回りの評判はすこぶる悪い。
はっきり言って嫌われものだった。
彼女は愛想が絶望的になかったのだ。
入学当初は彼女を遊びに誘ったり昼食に誘ったりする人間もいたのだが彼女はことごとくそれを拒絶した。
社交辞令や挨拶さえもしようとはしなかった。
そんな人間がどうなるかなんて考えるまでもない。
あっという間に爪弾きだ。
噂によると彼女をいじめてる女子グループもあるらしい。
そして先月の終わり、5月の末に事件は起こった。
彼女の体にある無数の傷、見るも耐えない悲惨な痕跡をクラスメイトが見てしまったのだ。
天野桜は虐待を受けている。
それは6月現在、学年中の周知の事実である。
だけど俺は愛している。
身をを焦がすほどあの少女を愛している。
それこそ薬の副作用で幻覚を見るほど。
幻覚の彼女と目が合うたび俺はハイになる。
最近は幻覚作用の強いLSDしか使って無い。
コカインもマリファナも彼女には敵わないのだ。
あぁ今日はいつ会えるのだろうか。
そんなことを思いながら俺は、誰もいない図書室で彼女が現れるのを一人待つのであった。
パープルヘイズ‥‥LSDの隠語、ジミ・ヘンドリックスの楽曲