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騎士は名付け親になる

ふやかし過ぎた保存食に気がつき絶望した騎士が本来の目的である森の件について幼竜に聞き忘れ、絶望する騎士をよそに幼竜はぐっすり眠りちょうど昼。


「ふきゅう。」



くあっと欠伸をしながら幼竜が見たものは白い砂にのの字を書きながらぶつぶついっている騎士である。


ちょうど呪術でもやっているような雰囲気だ。


(なんか怖い。)


二度寝した方がいいんじゃと考えてまた横になる、が騎士は起きた幼竜を見ていた。


あの、異常な察しの良さが発揮されたのである

「起きたのか。」


こくりと頷きながら羽を羽ばたかせ騎士の前にゆく。


《何してるんですか?》


聞いてはいけないんじゃとは思っても気になるものは気になるのである。


これに焦るのは騎士だ、のの字を延々と書くなど正直に言えば愛すべき幼竜に変人認定されるのではないかと焦った焦りに焦りまくった。


(どうしょう…変人認定変人認定。)


ぐるぐると頭の中で変人認定という言葉が回っていた。

そして頭の中で幼い子供のいる先輩騎士が言っていた言葉が蘇った「子供に春画を見られてこれなにと言われた時はびっくりしたが絵本やったら忘れてくれて良かったぜ、いやぁ嫁さんと違って単純で助かった。」   

その言葉を信じて騎士は新しい話題を提示する。


もともと聞きたかったことなので一石二鳥である。


「それより!聞きたかったのだが、お前の名はなんという?」

その問いに幼竜はこてりと首を傾げ頭に?を浮かべる。


その姿に騎士は勝利を予感し話を続けた。


騎士は知らない、話していた先輩騎士が帰ったら春画はなく頭に角の生えた嫁さんがいたことを、子供は単純ではあるが一度興味を引いたことは覚えてるものだ。


とはいえ一時しのぎにはなる幼竜の興味は騎士の話に向いた。


「ちなみに私の名はルトール。ルトール・ガーディナイト・レイシアンだ。」



ルトールは次男とはいえ侯爵家の息子、貴族らしく名前は長かった。


そして幼竜に名前の概念はない。名前というものも知ってはいたが仲間であった大蜥蜴は赤ければ赤い大蜥蜴やなになにやってた大蜥蜴で通じる。 


幼竜は噛んだ。しかもおもいっきり。

《るとー?がぁーない?れいし?》みぎゅぁ。」



ゴロゴロゴロゴロ砂の上を転がり回る。


「ぎゅー。」


しばらくしてむっくり起き上がり《るとーるがーで…》ぎゅ…。」


「ルトールでいい。」


《はい!ルトー。》 


「さらに訳すのか…。」


少し頭の痛くなった騎士だがふにゃりとした、可愛らしい笑みの前に突っ込みは無力なのであった。


気をとりなおしてルトールは問う。


「ところでお前の名はなんという?」 


《うーん?竜?ですよね。》


「……つまり名はないのか。」



(竜に名がないことなどあるのか?)


名前とはそれを持っている物の性質を決めるもので魂を肉体に繋ぐ鎖だ。

故に名を持たぬ赤子やまだ肉体に名の馴染まぬ幼子は上手く魂の力──魔力をあまり使えないし死にやすいのだ。


竜は長く生きるため出生率が低く卵から孵ったならすぐに名をつけ馴染むまで大切に大切に育てるその生態をしるルトールにとってこんな幼竜が名を持たないのは不思議だった。



その疑問に返されるは元気にそしてなんとなくどや顔な幼竜の《多分!》であった。


「そうか……。」

(肯定するんじゃない、自慢することか!)


そう思ったことなどおくびにも出さず提案する。


「ならば今から自分に名をつけたらどうだ?」


「きゅーう…う?」


こてりと首を傾げながら考える幼竜、悩んでいる風情であるがしっぽは砂をパシパシと右に左にかき分けることに集中していた。


面倒なのである。



(あっルトーに決めてもらえばいいんですよ!)


《ルトー。》



「ん?」


うるうると瞳を潤ませ頼めばなんとかなると幼竜の知識がそう訴え幼竜はその通りにした。


幼竜の知識は偏っているのだ。

《よくわからないのでルトーが決めてください。》 


そしてルトールは固まった。つまり処理落ち状態だ。

まぁいきなり竜にとって大切な名をつけてくれと言われたのだ、仕方ない。


とはいえ目の前の幼竜は瞳を潤ませ上目遣いで見上げている、仲間に竜バカと言われるほど竜が好きなのだ、いや愛してさえいるルトールの胸はキュンキュンだ。


(鼻血がでそうだ。)


とりあえずルトールは全力で無駄に優秀な頭を回転させて考える。


(何か幼竜が得意なことから連想すればどうだろうか?それを参考にすれば!)


「何か得意なことはあるか?」



《ご飯狩れます!》 


「……。」


(生産的なことだと考えれば……いや無理があるか。)


特技は狩り普通なら狩りにちなんだ名前にするだろうがルトールの思考は狩りをブロックした。幼竜には似合わないそれだけである。


(生産的と言えば東の方だったかに仏陀がどうとか言うのがあってそれを産んだのが摩耶夫人だったな…。)


生産の産しかあっていない。それでも思考は続く。


(摩耶…マヤ…まーや…まーやー……ん?そういえばマーヤーにはこの世の始まりや幻想の世界、あとは偉大、心、魔術等の意味もあったはず。

竜にふさわしいな。

だがマーヤーだけだと味気ないな。うーん。)


ルトールの思考は回り幼竜のしっぽは上下運動。砂埃がきらきらしている。


(私の名字をレイシアンから…んをとって…いやダメだ。

何を考えている。だがマーヤレイシアならなかなか響きがいいし…。

だがこれでは私の独占欲的ななにかがバレ…。)


そこでふと我にかえったルトールが見たものは砂につけた左右の運動から上下運動に変わるしっぽ。

若干バシッと言う音が混じっている。



「マーヤレイシアはどうだ?」



《いいですね!その名前にします!》



(確実に何も考えていないが…可愛らしいからいいか。)



そんなわけで幼竜はマーヤレイシアになった。


《ふふ、私はマーヤレイシアです!》


「あぁ。」


(しっぽを上下にふるのはブレスを吐く合図…か。)

ちょっぴりへこむルトールであった。  

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