騎士の処理落ちと念話
遠くで歌が聞こえる、低く甘くとても綺麗な声。
そして泣きたくなるほどに優しい。
そんな歌と共に幼竜は起きた。
幼竜が体を起こすと体から布が落ちる。昨日、騎士が幼竜に巻き付けた外套だった。
それを見たら幼竜は嬉しくなった。
また温かな物が胸を満たす。
(うーん、この人といると気が抜ける。)
気分にあわせてピルピルピコピコ動くのはしっぽと体。
体と同じくらいしっぽがあるからしっぽをふれば体も動くのだ。
とてもとても幸せな気分で一鳴き。
「おはよう。」
今日も今日とて騎士は無口で無表情。
それでも伝わる、感情…一応、笑顔を浮かべてる雰囲気である。
よくみると口元が少し上がってるかもしれない。
そして幼竜はそれにふにゃりと笑顔で返して昨日考えていたことを実行する。
《おはようです。》
「………。」
幼竜が念話を使って挨拶したあと無言で辺りを見回してまた幼竜を見る騎士。
それから騎士はピッキリ処理落ちして動かなくなった。
《…騎士さん?きしさーん。》
幼竜が騎士を呼ぶけれど騎士は答えません。
しばらくすると幼竜の瞳がすわっていった。
実は幼竜はそこまで気の長い方ではない。というより普通の子供より短い。
にまぁと笑顔を浮かべて騎士から5メートル遠ざかる。
なるべく足の爪を出さないようにした後は簡単。
騎士の顔めがけてジャンプ!騎士の身長がが高くて足りない分、羽ばたくのは忘れない。
ていっと決めながら騎士の顔に着地後、落ちた。
《あっ…。》
幼竜の足の裏は肉球があるだけで痛くないが、一応騎士の意識を戻ってこさせるには良かったらしい。
地面につく前に拾ってもらえた。
「喋れるのか?」
明らかに遅いタイミング、瞠目しつつ騎士はたずねた。
おそっと幼竜は思ったが、首振り人形よろしくブンブン頷いて見せる。
《えへへ、念話っていうんですよ。》
いかにも褒めて褒めてといった嬉しそうな顔で返す。
けれどもそれに騎士は「そうか。」と返して、また保存食をふやかす。
昨日の察しの良さはなんだったのかと思うだろうが理由はある。
昨日の保存食は、保存食集めの好きな騎士仲間が甘いのは嫌いだからと、甘い物が好きな騎士にくれた物で、雪桃という魔木からとれる実を使った保存食で実は高級品だった。
そして今ふやかしているのは灼熱苺と言う同じく魔木からとれる実を使ったミルク風味の保存食だ。
(灼熱苺…。)
そんな訳で幼竜にあげるため血涙を心の中で流しながらふやかしていた騎士のセンサーは死滅している。
とはいえ幼竜には関係のないこと騎士の背中に向かってむぅと頬を膨らませる。
次はしっぽで叩こうかと考えるがダメージなどないだろうとも考える。
幼竜の体は鱗こそあるが柔らかで感触はモチモチ、肉球はフワモチだ。
かといってほかのは小さな構ってもらえないからするイタズラレベルをはるかにこえる。
やったら即死なくらい幼竜にはわかっていた。
(…うぅ。いつか晴らす!)
そうこうしているうちに保存食をふやかし終わったようで棋士が振り向いた。
「そろそろ、ふやかし終わったから食べよう。」
《はい!》
食べ物の前では単純なのである。
口にふやかした保存食を匙で運んでもらいながら幼竜はあぐあぐ食べる。
騎士は匙で運ぶ。
《そういえば、綺麗な歌でしたね》
ピタリと匙を運ぶ手を止める、聞かれているとは思わなかったのだ。
「聞いていたのか?」
《綺麗な歌でしたよね。》
「そうか?」
《はい!》
(本当にこの幼竜が森を消したのだろうか…。)
《どうかしました?》
「いや。何でもない。ほら…。」
「きゅい。」
疑問を後回しにしてまた給餌に戻る。
そのうち幼竜は眠くなってきた。
まだ体力が回復してないから食べたあとは眠くなるのだ。
そこに騎士はまた外套をかけてやる。
そのあとは幼竜を優しく撫でる。
それが心地よくて幼竜は騎士の手にすり寄った。
ガタッと音がしたが気のせいだろう。
ところで騎士は忘れてないだろうか、一緒に保存食をふやかしていたことを………。
今回みじかかったですね。フワッとした設定ですから仕方ありませんが。
次回は名前が出てくる予定。
王都につくまでは戦闘は…ないはずですがいれるかも?
それと作者は残念ながら字書きじゃなくて絵描き…絵を描くのを趣味とする人です。
いたらない点もあるでしょう(むしろそれしかない)
なので誤字や感想あとはこうしたら良いなどあれば、どしどし下さい!