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第4話 決意

「ふあっ…」

「うわ、ちょっと羽莉顔やばいから。口くらいおさえなよ。」

「おっと。」

美雪に目を細められ羽莉は両手で口をおさえた。

昨日の出来事のせいで、なかなか寝付くことが出来なかったのだ。

「う~、学校行きたくないなぁ。松村さんと同じクラスだし…。」

「そんな気にすることないって。…まあ…なるべく一人にならない方がいいとは思うよ。」

「えっ、なにそれどういう意味!?やだ怖いよ~…。」

「大丈夫大丈夫、なるべく羽莉から離れようにするからさ。」

「あ、ありがと美雪ぃ…。」


『学校来れなくしてやるからな!!』


羽莉は昨日のあの言葉を思い出し頭を悩ませた。

学校来れなくする…って…あたし一体なにされるんだろ…?

「…あ。」

「へ?」

下駄箱に近づいて来れば、美雪が立ち止まった。

羽莉も立ち止まり下駄箱を見てみれば、絵実達が自分のクラスの下駄箱の前に集まっていた。

絵実も羽莉達に気づき、睨んできた。

その間に険悪な雰囲気が立ち込めた。羽莉はいたたまれなくなり、ふいと視線を逸らした。

「…なに見てんだよ。」

「…別に。」

睨んでくる絵実に対し、美雪も睨み返しそう答える。絵実はその様子に舌打ちをし、靴箱を思い切り蹴った。

「行くぞ。」

率いている女子達にそう告げ、ぞろぞろと去って行った。

「なんだあれ。感じ悪。行こう。」

「う、うん。」

…あたしの靴箱の前でなにしてんたんだろ…?

絵実達の後ろ姿を見ながら、羽莉は自分の靴箱を開けた。

「…っ…!!」

羽莉は思わず鞄を落としてしまった。靴箱の中の自分の上履きの上で、芋虫やムカデなどの大量の虫がもぞもぞと不気味に動いていた。

「ん?どした?」

「きっ、きゃぁ!!」

バンッと後ろの靴箱に背中を貼り付けた。羽莉の表情に美雪は羽莉の靴箱を覗いた。

「っ…!!なっ、なにコレ…!!」

美雪も絶句した。気味悪く動く虫たちに羽莉は吐き気がこみ上げ、口を手で押さえその場に座り込んでしまった。

「羽莉っ、」

「だ、大丈夫…。」

「先生呼びにいこ!上履きも借りなきゃ…。」

「ご、ごめ…腰抜けちゃって…さ、先行ってて…。」

「わ、分かった!」

美雪は羽莉の靴箱を閉め、急いで階段を上っていった。

羽莉は震えながら動けないでいた。

…きっと…松村さん達がやったんだ…。

頭に先程睨んできた絵実達が浮かんだ。同時に、虫たちの動きも思い出しぶるっと震えた。

「うぇ…。」

「あり?羽莉ちゃん?」

「っ…!!」

バッと顔を上げると、たった今登校してきたらしい陵夜と水樹が立っていた。

「おはよ~っ!どしたの?こんなところに座り込んじゃって。」

「…具合でも、悪いの?」

「べっ、別にっ…あ、あんた達には関係ないっ…!!」

「?…マジ、どうした?震えてる…。」

陵夜が俯き震える羽莉の肩に手を置いた。

すると、羽莉は咄嗟にその手を思い切り振り払っていた。

「触らないでよ!!」

「……。」

涙が滲んだ瞳に、二人は驚いて思わず固まった。

羽莉はハッとし目を泳がせると、鞄を拾いなんとか立ち上がった。

「もっ、もう話し掛けないでって言ったでしょ!?」

「う、羽莉ちゃん!」

羽莉はバッと背を向け階段を駆け上っていった。

その場に残された陵夜と水樹は顔を見合わせた。

「泣き、そう…だったよな?」

「…うん。」

「えっ、お、俺に触られたのそんなに嫌だったのかな!?」

「…さあ…なにかあったんじゃない?」

「なにか、って?」

「…知らないけど…。」

そこで水樹は、昨日の屋上での羽莉を思い出した。


「絶対松村達に決まってるって!!」

「…やっ…ぱし…?」

「くっそ~悔しい!やることが汚いんだよあいつら!!」

美雪はトイレの洗面台にバンッと手をついた。

「先生だってただのイタズラだなんて真面目に聞いてくれなかったしさ!羽莉!あんたがちゃんと先生に説明しなよ!」

「い、いいよ、そんな大事にしたくなし…。」

「十分大事じゃない!!」

「と、とりあえず落ち着いて美雪…。心配してくれてありがとね、あたしは平気だから…。」

「羽莉…。」

「ほら、早く教室戻ろ?」

「…う、うん…。」

納得しないというような顔で渋々頷いた美雪に苦笑して、トイレから出る。

「あ。」

「ッ…!!」

丁度羽莉がトイレから出たところで、水樹が通りかかった。

羽莉の顔が一気に強張る。

「あー!!ちょっと名城!!」

「みっ、美雪っ…!!」

「?」

水樹に殴りかかりそうな勢いで美雪が服を掴めば、水樹は首を傾げた。

羽莉は慌てて美雪を止めようと腕を掴む。

「あんた達一体どういうつもり!?羽莉こんな目に合わせて!!」

「美雪!!本当にいいから!!」

「どういう事…?」

美雪の言葉に眉を寄せる水樹。

水樹に知られたくなかった羽莉は本気で焦り始めた。

「あんた達のせいで羽莉が取り巻き達に嫌がらせされて大変なんだからね!?」

「嫌がらせ…?」

「そんなことされてない!!」

羽莉は声を荒げて美雪を水樹から引き剥がした。

その行動に、美雪も水樹も驚き目を丸くする。

「羽莉…?」

「…や、やだなぁ美雪…そんな風に言ったら名城君勘違いしちゃうじゃん。」

羽莉はヘラッと笑って顔を上げる。

「だ、だって羽莉…っ!」

「嫌がらせなんてされてないよ。ちょっと悪口言われただけじゃない。気にしない気にしない!」

「羽莉…!?」

「……。」

羽莉のその笑顔に、なぜか不機嫌そうに眉を寄せる水樹。

「ほ、ほら、授業始まっちゃうよ!!早く教室戻ろう!」

「ちょっ…!!」

羽莉は美雪の腕を無理矢理引いて、水樹の前から去った。

「…嫌がらせ…?」


「ちょっと羽莉!!なんで誤魔化すのよ!あいつらに言えば松村達だってなにもしてこないだろうし…!」

「あいつらの手は借りたくないの!」

美雪は羽莉の怒声にぐっと押し黙る。羽莉は一息置いて美雪の腕から手を離す。

「お願い…名城達には言わないで…。もうあいつらと関わりたくないし……お願い、美雪。」

「…分かった。だけどあたしは絶対あんたの味方だから。なにかあったら絶対言いな。」

「…うん、ありがと、美雪。」

真面目な表情をする美雪に、羽莉はまた苦笑いで答えた。







あたしは絶対泣かない!!


嫌がらせがなんぼのもんじゃい!!




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