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第3話 厄日

「最悪最悪最悪最悪…。」

暗示のようにぶつぶつとその言葉を繰り返す。

「羽莉、顔やばい。マジ怖いんだけど。」

棒付きキャンディーを口に入れながら目を細める美雪。

「最悪なの、死んじゃえばいいんだ、名城水樹なんて死んじゃえばいいんだ。」

「昨日なにかあったわけ?」

「……。」

パンツの柄からかわれたとか言えないんだけど…(汗)

「とにかくむかつくの!!」

「あーはいはい。」

バンッと机を叩く羽莉に面倒くさそうに手で払う仕草をする。

そこで肩を叩かれた。眉を寄せたまま振り返ると、クラスのリーダー的な存在の松村絵実(まつむらえみ)が女子を引き連れて立っていた。

「なにか用…?」

「ちょっと話あるんだけど、いい?」

「話…?」

「羽莉に話があるんならうちも行くけど。」

いつも通り涼しい顔をして美雪が腕を組み立ち上がる。

「はぁ?美雪は関係ねぇだろ。」

「うちらは三園に話があるって言ってんだよ。」

「集団でなにするつもりだよ。」

「み、美雪、いいよ。」

羽莉はその険悪な空気を収めようと慌てて立ち上がる。

「あたし行くよ。」

「ち、ちょっと羽莉、あんた状況分かってんの?」

「?、話するだけだから平気だって。」

「羽莉ッ、」

「うっせーよ美雪。」

「行くよ。」

「はいはーい。」

止めようとする美雪に「大丈夫だよ」と言って絵実達のあとに着いて行った。

「あのバカ…」

舌打ちをして美雪はその後ろ姿を見て溜め息をついた。


「マジ、なんなワケ?」

「…はい?」

屋上への階段の踊り場へ連れてこられ、絵実の第一声がこれだった。羽莉は首を傾げ眉を顰める。

「あの、あたし松村さんになにかしたっけ?」

「とぼけてんじゃねぇよ!!マジむかつくんだけど!!」

「なんで陵夜様達があんたなんかと!!」

「…はぁ…?」

うわ、なんか遂に来ちゃったよこういうの。

はぁ、と溜め息をついて絵実達を見直す

「あの、あたしあの人達と関わるつもり更々ないんで、どうぞお好きに…。」

「お好きにじゃねぇんだよ!!」

「絵実はねぇ、中学の頃から水樹様が好きなんだよ!!」

「てめぇみたいな奴に捕られて頭きてんだよ!」

「と、捕るって、だからあたしはあの人達と仲良くしようなんて思ったこともないし、逆に近づきたくない程なの!だったらあんた達があのナルシスト達に直接言えば…、」

「はぁ!?なにこいつ!てめぇふざけてんじゃねぇよドブス!!」

その言葉に羽莉の片眉がピクリと上がる。

ドブスって…。


その言葉に、短気な私は爆発。


「そんなこと言うヒマあんならあのナルクソ野郎共のとこ行けっつーのッ」

「はぁ!?」

腕を組み顔を引きつらせながらそう言い放った。

「あんた何様のつも「何様でもないっつーの!その濃い化粧落としてから言え山姥(やまんば)!!」

その言葉に、顔を真っ赤にさせ見事にキレた女達。

「誰が山姥だてめぇ!!」

「確かにあんた達より可愛くないけど、そんなことうだうだ言ってんだったら好かれる努力しやがれ!!」

「自分が好かれてるからってなに調子のってんだよ!!」

「そんなこと頼んだ覚えない!!」

声を張り上げた羽莉に少し怖じ気づく絵実達。

「だったらもう金輪際関わんじゃねぇよ!!」

「分かってるよ!そのパンダみたいな目でさっさと媚びってろ!」

完ッ全にキレた絵実は羽莉に平手を振り上げた。


―――――パァンッ


渇いた音が踊り場に響く。同時に、頬に痛みが走った。

「いった…」

「ふっざけやがってッ…これから覚悟しろよ!?」

「学校来れなくしてやるからな!!」

そう言ってバタバタと去って行った。羽莉はジンジン痛む頬を押さえながら呆然とする。


…なんで、あたしばっかりこんな目に遭うの…。


そのまま屋上に駆け上がり、ドアを勢いよく開け息を吸った。


「ふっざけんなぁぁぁぁッ!!!!」


グランドに向かって思いっきり叫んだ。ふう、と大きく肩で息をし、怒りに震えながらドアをまた勢いよく閉め階段を下りていった。

「…デケェ声…」

コンクリートの上で昼寝していた水樹は耳を塞ぎながら目を細め起き上がった。


「うわ、羽莉!」

「……。」

真っ赤になった羽莉の頬を見て目を見開く美雪。

「松村にやられた!?」

「…最悪…、」

怒りに震え拳を握り締める。

「全部あいつらのせいだ!あいつらのせいでぇ!」

「お、落ち着け落ち着け。」

今までにないような怒り様に、美雪は少し怖じ気づき宥めるような仕草をする。

「だからあたしも行くって言ったのに…」

「だってぇ…ッ」

「もう周りは敵だらけだねぇ…」

「そっ、そんなぁ…ッ」

「平気平気!あんたにはあたしがいるじゃん?」

美雪は羽莉の頭を撫でクールに笑った。

「心配すんなって。」

「…美雪ぃ…ッ」

羽莉はうる、っと目に涙を浮かべ美雪に抱き付いた。

「美雪愛してるぅ!!」

「あー悪いけど一番は彼氏だから(笑)」

「えぇッ!?」

「うそうそっ、羽莉が一番だよっ」

美雪はそう言って羽莉に笑いかけた。






私はこのあとの悲劇をまだ想像してなかった…。


神様、そんなに私がお嫌いですかぁぁぁ!!?

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