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第1話 出会い

三園羽莉(みそのうり)です。高校一年生。彼氏は、無し。ホントは欲しいんだけど、なかなかできない。

あ、いきなりこんな自己紹介すみません。ここからはナレーターでどうぞ。


「ねぇ、美雪。」

「ん?」

隣で購買で買ったパンを抱えながら携帯をいじる羽莉の親友、高山美雪(たかやまみゆき)に呟くように不満をぶちまけた。

「彼氏欲しい。」

「はぁ?なにいきなり。」

「だって高校入ってもう一ヶ月。男子にもなじめて、もうそろそろ告白されてもいいころ。なのに、高校生活最初の夏休みを一人で過ごすなんて寂しすぎるじゃんそうだよね!?」

「なぁに興奮してんのあんたは。」

バシッ

最後に力んだ羽莉に美雪はいつも通りクールにつっこんだ。

「痛い!う〜、だってぇ。いいなぁ、美雪は。綺麗だからモテるでしょ?」

「そんなことないよ。」

「まぁ、美雪は彼氏一筋だもんねぇ。」

「まぁね〜。…あ、『(りん)』だ。」

「え?」

うざったそうに目を細めた美雪の視線に羽莉も向く。案の定、もっとも苦手な二人組がこちら方面へ歩いてきたからだ。

「キャーッ!!『凛』よぉ!」

「かっこいい〜!」

陵夜(りょうや)様〜!!」

水樹(みずき)様こっち向いて〜!!」

その光景に思わず眉間に皺を寄せた。たくさんの女子に囲まれアイドルのように騒がれる男子生徒二人。目も眩むような眩しいオーラに、羽莉はちょっと腰が引けた。

「相変わらずすご。苦手だわ〜、あの二人。」

「あたしも苦手。でも美雪には彼氏がいるもんね〜。」

「しつこいわ!」

「アハハッ。」

羽莉はなにも気にせずその二人とすれ違った。その時、たくさんいた中の女子の足に引っかかってしまったのだ。

ガッ

「っ、キャッ」

「え?」

うわっ!

咄嗟に側にいた誰かの服を掴むが、その人物も引き込むようにその場に盛大に転んでしまったのだ。背中に痛みが走ると同時に、身体にのし掛かる体重。せっけんのいい香りが鼻を掠める。

「羽莉ッ、」

「いったぁ〜…。」

……ん?

「いってぇ…。」

目を開けると綺麗な顔がすぐ目の前にあった。あまりの近さに顔を赤く染める。

こいつ、名城水樹!?

「わわわっ、ごっ、ごめんなさい!」

ムニッ

…“ムニッ”?

「おぅっと、乳もみハプニング!」

周りの男子が騒ぐ。羽莉の胸には大きな綺麗な手が触れていた。“水樹”はそれを見て眉を(ひそ)める。

なっ…!?

焦ってどかそうとするが、呟くような相手の第一声に、その動きはピタリと止まった。

「…小さい。」

かぁ…っ

その言葉に頭に血が昇った羽莉は、これ以上無いほど顔を真っ赤にした。

「…ふっ、ふざけんなぁぁ!!!」

パァンッ

静寂に包まれた廊下に乾いた音だけが響き渡った。



「アハハハ!!!」

「もう〜、最悪〜。」

「もう羽莉最高!お腹痛い〜!!」

「そんな笑わなくてもいいでしょ!?てゆうか、あたしBはあるわよ失礼な!」

「しかも、あの名城水樹を殴るなんて!マジスッキリしたわ〜!」

「もう〜。」

涙目で笑い転げる美雪に羽莉は顔を赤くし頬を膨らませた。

「でも、あの『凛』の一人殴っちゃって、女子からの視線痛いよ〜?」

うっ、そうだった。

その言葉がグサリと胸に突き刺さる。同時に聞こえてくる女子の声。

「あいつでしょ?水樹様殴ったの。」

「ああ、三園羽莉ってやつ。」

「マジ最悪なんだけど。」

トホホ…。

『凛』とは、あたし達と同じ一年生で、二人とももんのすごくかっこいい!!水野陵夜(みずのりょうや)の方は、運動神経抜群、しかもここの女子生徒ほとんどに手をだしているという超遊び人。ピアスつけて、茶髪のロン毛。女教師にも手をだしているという。だから陵夜の方は超苦手。

名城水樹(なしろみずき)の方は、超クールで陵夜と反対に、女嫌い。こちらも運動神経抜群。とりあえず、成績優秀。有り得ない程完璧人間。

そして、その名城水樹に乳を揉まれ、挙げ句の果てには『小さい。』と…小さくて悪かったな!!

そして、言うまでもなく、二人はモテる!だから、面倒くさい女子のトラブルに巻き込まれたくないから、近寄らなかったのに…、結局こうかよ…。段々大きくなる悪口もうざったい。

「ねぇ、つーか可愛くないじゃん。」

「超うざい。」

さすがに苛つき、羽莉は一言なんか言ってやろうと立ち上がった。

「ちょっとあんたらさぁ…。」

ガラッ

だがそれは教室の戸が開く音と間抜けた声に掻き消された。

「は〜い、みなさん。」

水野陵夜が名城水樹の肩を掴みながら満面の笑みで手を振っていた。一気に教室が悲鳴に近い女子の声に埋め尽くされる。

「キャーッ!!!」

「なんで『凜』の二人がうちのクラスに!?」

「や〜ん、かっこいい〜!!」

「…うるさ。だからやだったんだよ。」

「まぁまぁっ」

水樹が耳を塞ぎながら不機嫌そうに顔を歪める。

な、なんでこの二人がうちのクラスに!?

「あのさぁ、三園羽莉チャンってこのクラス?」

その言葉にみんながシーンとする。そしてキッと女子が羽莉を睨みつけた。それにびびりながらも手を挙げた。

「あ、あの、」

「ん?なに?」

「三園は私ですけど…。」

「…あぁ、君君!ちょっといい?」

「えっ?ちょっ、」

「じゃあ、おじゃましました〜。」

「り、陵夜様!?」

強引に羽莉の腕を引き教室を出て行った。羽莉は状況が理解出来ず口をパクパクさせるだけだった。

なっ、なんなの!?


屋上に連れて来られようやく手を離してもらった羽莉は落ち着かない様子で話しかけた。

「あ、あの、なんの用…でしょうか…。」

「…ぶっ…。」

はっ?

「アハハハハ!!君最高!超ウケる!」

「陵笑いすぎ。」

「だってよぉ…ッ」

涙目になり美雪みたいに大爆笑する陵夜に呆然とする羽莉。

「俺達さ、君の事超気に入った。これから仲良くしようぜ!」

陵夜の手が羽莉の髪をぐしゃっと撫でる。大きな手に肩が跳ねた。

「はっ、はぁ!?なんでそんな方向…ッ!?」

「俺は水野陵夜!一年C組!よろしくな!」

「し、知ってるけど!つか話を…っ!」

流されてる羽莉に今度は水樹が頭に手を置いた。

「名城水樹、一年C組。よろしく。」

「あ、はい。…じゃなくて!聞いてますかあんたらッ!」

「メアド交換しよーッ」

「だから話をッ、」

聞けよぉぉ!!

だがやはり流されてしまった羽莉は陵夜と水樹とメアド交換してしまったのだった。

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