96話 ゴキブリの化け物だ
六匹のグールを一瞬のうちに倒してしまった三
人。
その中でも千秋の手の平から発せられた光線
これにはメイサも力也も驚いている。
いや、実は一番驚いているのは千秋自身かもし
れない。
四匹のグールがメイサの銃弾で弱ったのを見て
身体が勝手に反応したのだ。
それにしても・・・
呆然としていた千秋だったが突然表情が曇った。
やがてその表情は驚愕に代わり、顔から血の気
が引いてしまった。
「千秋どうしたの」
千秋の豹変にメイサが気づいた。
「ダメ、逃げましょ、ここは危険」
「どうしたんだ」
力也も驚いている。
「来るの、とてつもない怪物が、凄いエネル
ギー発してる、無理、私達では歯が立たな
いわ、ここから逃げましょ」
千秋は駆けだした。
「みんなも逃げるのよ。ここにいてはダメ、
早く逃げるの」
そう振り向いて怒鳴った千秋の前に、空中
から黒い物体が勢いよく落ちてきた。
危うく下敷きになるのを免れた千秋は、転
がりながら黒い塊をかわすと、直ぐに起き
上がった。
「なんじゃ、こいつは・・・」
力也が絶句している。
強大な黒い塊は大きく口を開けると、青白い
光線を放った。
「うわぉ・・・」
光は力也に向かって発せられた。
力也は慌てて岩陰に身を隠したが、その岩
は青い光線で真っ白に変わった。
「わ、わちゃ」
力也は転々と逃げるが、黒い塊は、力也に向
け光線を吐き続けた。
「な、何だこのゴキブリお化けは」
力也の言う通り、ゴキブリを巨大にした化け
物だ。
大型トラックほどの大きさがある。
「あのぬめった黒光り、私の大嫌いなゴキブ
リの光沢よ」
メイサが唾を吐いている。
光線の放出は止まっている。
続けては吐きだせないようだ。




