93話 私グールになっちゃったの
メイサが戦う意欲を見せた事で千秋にもある考
えが閃いた。
あの伊集院が、あの雪が、メイサに弾だけ渡し
て銃を渡し忘れるはずが無い。
メイサも(選ばれて)ここに連れて来られたは
ずだ。
ならば、ひょっとして・・・。
「メイサ」
「なあに?」
メイサは不思議そうに千秋に首を傾げた。
視線は、壁の向こうで5匹の黒豹グールと戦っ
ている力也を追っている。
「私の言う通りにしてくれない」
「何故?」
「理由は、言う通りにしてくれたらわかるはず」
「ええ、いいけど」
メイサは又首を傾けた。
視線は力也の戦う姿に釘づけだ。
「頭の中を空っぽにして」
「空っぽ?」
「そう、空っぽにするの、昔よくやったでしょ、
馬鹿の真似」
「何それ・・・」
「いいから、頭の中を空っぽにして、そして銃を
イメージするの、でねその銃を頭の中から、イ
メージでいいから指先まで運んで行くの、メイ
サには、そう、赤い銃、真っ赤な銃が似合うわ、
真っ赤な銃をイメージして、指先まで運んで行
くの」
「千秋、大丈夫、早く行かないと力也やばいかも」
「黙って言われた通りになさい!、赤い赤い銃よ」
「もう、、何馬鹿な事言ってるのよ、赤い銃を想
像すればいいのね、赤い銃、赤い銃、、どうせ
なら、かっこいいのがいいな、銃身は黒にしち
ゃお」
「ほら・・・」
千秋が得意げにメイサを見た。
「え?」
見ればメイサの右手首が赤い銃に変わっている。
「いやーーん、何、これ、一体なによこれ」
「メイサの武器じゃない」
やはりわざとだったのだ。
メイサに銃を手渡さなかったのは。
考えればメイサも元々はハンター要員として入
って来た能力者だ。
たまたま、科学者の能力が優れていたから学者にな
っただけで、ハンターとしての素質は生まれ持って
いたのだ。
「千秋どうしよう」
メイサは、銃に変わってしまった自分の右手首を眺
めながらため息をついている。
「私グールになっちゃったの」




