86話 意味がわからない
半魚人が地上に侵食し始め、人類の危機になっ
ているという。
雪の説明はまだ続く。
「今半魚人の分身能力は1000が限界だけど、
それも進化しているの」
「一匹でもっと多く分身できるの?」
「ええ、私達の調査では既に一万倍の分身能力
を持った半魚人がいるみたい」
「嘘!」
「一万だったら、全てがその能力持ったら10億
・・凄い数になるわ」
「繁殖能力は?」
メイサが科学者らしい質問をした。
「そこが救いなの。どういうわけかわからない
けど、半魚人本体の実数はそれほど増えてい
ないの、ただ個体の分身能力が増えて行くと、
不思議なメカニズムでしょ」
雪の言葉に納得しつつも、フト、疑問も湧いて
きた。
あの何事にも慎重な幽厳村正が何も言わなかっ
たことだ。
それ程半魚人の侵食が激しければ当然メイサの
耳にも入っているはずだ。
しかし、そんな話一度も聞いたことが無い。
「千秋、ハンターの時半魚人の話聞いたことあ
る?」
「ううん」
千秋は首を振った。
「力也は?」
「俺も初聞きだ」
「おかしいと思わない、急に降って湧いて来た
ような半魚人の話」
「そこが問題なの」
雪がメイサの話を遮った。
三人に言い聞かせるように
「今まで半魚人が狙うのはグールばかりだったの、
表向きはね」
「表向きって・・・?」
「実は裏で多くの人間をこっそり捕獲して食して
いたのよ」
「意味がわからない」
メイサは助けを求めるように千秋を顧みた。




