82話 伊集院実朝はニコリとうなずいた
「私達にはグールを見極めるものが何なのか
未だ解明できてないのに、あなた達はいつ
わかったの?」
「グール化が始まって、すぐですよ」
メイサは絶句した。
人類が今日まで解明できないでいた、グール
発見の術をグールはあっけなく見つ
けていたと言うのだ。
この能力の差は一体何なんだ。
「じゃあグールは人間とグールの種別が簡単
にできるわけ?」
「勿論、だからこそ私達は人間界で、人間と
して普通に働けてたわけです」
「そんな・・・」
メイサは周りを見た。
この憤りを誰かに伝えたいと思ったのだが、
千秋も力也もきょとんとしている。
「じゃあ、ハンターのビル、あそこにもグ
ールが潜入しているの」
「当然です」
伊集院はポケットから小さな発信機を取り出
した。
「この装置からは人間の周波数帯を持った遠赤
外線が出ています。これさえ持っていれば、
ハンターも私達がグールだとはわからないの
です」
ダメだ。
人間がグールにかなうはずがない。
この技術力の差、圧倒的と言うより、ケタ違
いだ。
「あなた達はここで、何を研究していたの」
「グールと人間が共存できないか、その研究
です」
「グールと人間の共存?そんなのできっこない
だろう」
少し話が飲み込めてきたのだろう、力也が大声
を上げて話に入って来た。
「そうだ!」
伊集院は指をパチンと鳴らすと、身体中から立
ち昇っていた銀の陽炎が消え、普通の人間の姿
に戻っていた。
グールのままの姿が力也達を刺激していること
に気付いたようだ。
雪も同じようにグール化をやめた。
「グールの一部ですが、グール化になる術を自
由にコントロールできる人が多数います」
「あなた達のように?」
「そうです」
伊集院実朝はニコリとうなずいた。




