74話 あなたがグールになっていたらどうしますか
「人間はグールに食べられないよう、その研究
で忙しかったのです」
メイサは心苦しい嘘をついた。
そんな哲学的テーゼを調べる人間など、今の人
間界にはいない。
この10年、ハンターとして生きてきて、その事
実は嫌と言う程味わってきた。
同じ研究をしていた浜田岳に言わせれば「残っ
た人間は質の悪い奴ばかりだ、人類全体を鍋の
中にぶち込み、グツグツ煮込み、その上澄みを
すっくてもって行ったのがグール、残ったガラ
が今の人類だと」
メイサも実はそう思っていたのだ。
人間は滓ばかりだ。
その滓の中に自分もいる。
滓ばかりになった人類に未来はあるのだろうか。
「もしメイサさんがグールになっていたらどう
していました」
銀グールが当たり前のように聞いてきた。
嫌な質問だが、この10年、人間ならば誰もが自
問自答してきた問題でもある。
「何度も言いますが、グールになるならないは、
ある法則はあったにせよ、とりあえずは人類
の自由ではありませんでした。本人の意思に
かかわらず、強制的にグールになってしまっ
たんです」
「そんな事はわかってるいるわよ」
「気づいたら、グールになっていた、月に一度
人間を食べないと自分が死んでしまう、もし
そんなグールにメイサさんがなったらどうし
ていましたか」
メイサは黙った。
人間ならだれもがこの質問に行きあたったはずだ。
肉親の誰かがグールになり、そのグールに肉親が
食べられた経験のある人類はあちこちにいる。
恨むことができるだろうか。
食べた肉親を。
メイサは思う。
肉親を喰らうくらいなら、むしろ食べられる側に
回った方が心は安らぐ、喰らって正気に戻った時、
次の一か月の事を考えると、まさに生き地獄だ。
グールにはなりたくない。
人間を喰らうグールなんかには。
そして銀グールは聞いてきた。
そのグールに、メイサがなっていたとしたら、ど
うするかと。
この10年、ズート考えてきたことだ。
頭からこびりついて離れない思惑だ。
答えはとうの昔に出している。
メイサがグールになったら
あるいはなっていたら・・・。




