72話 その弾には副作用があるんです
「どうしてあなたがこの弾を持っているの」
メイサの声は乾いていた。
「そんな事は問題ではないのです。問題はこ
の弾です」
「その弾がどうしたの、その弾の何が問題な
の」
「この弾はミトコンドリアの核を凝固します」
「それがどうしたの、だから効くんじゃないの」
言って慌ててメイサは口を押えた。
銀グールの口車に乗って又喋ってしまった。
しかし銀グールはかまわず話を続けた。
「ミトコンドリアの核は本来地表に溶け込むも
のです。そして長い年月をかけ浄化され新し
い核に生まれ変わります」
「えっ?」
銀グールが何を言ってるのかメイサには理解で
きなかった。
ミトコンドリアの核?
ミトコンドリアを利用し、グール討伐の弾を作
ったが、肝心な理論構成は全て浜田の頭の中に
入っている。
メイサはいわば浜田が考えた設計図に基づき、
弾を作っただけにすぎないのだ。
ミトコンドリアの核が地表に溶け込み浄化される
銀グールは何を言ってるのか?
メイサの怪訝そうな表情を見て悟ったのか、銀
グールはうなずきながら
「端的に言いますと、この弾には強烈な副作用
があるのです」
「副作用って、死んじゃうんだから関係ないで
しょ」
「人類のミトコンドリアの解明はまだそんな程
度でしたか」
銀グールは驚いている。
人類では稀有と言われるメイサですらこの程度
の知識しかなかったのかと、呆れているように
も見える。
「ま、いいでしょ。この弾についは、現段階で
はさほど問題ではありません。元々メイサさ
んをここにご招待したのは他に目的があるの
ですから。弾についてはこちらの方で対策も
打っていますし」
「ちょ、ちょっと待ってよ、招待って、無理や
り連れてこられたのよ、それに他に目的って、
何よその目的ってのは」
「もうしばらくお待ちいただけますかあと少し
でもう一人のゲスト、いや二人かな、二人が
お見えになりますから、話は全員がそろって
からと言う事で」




