69話 食べたいのなら、早く食べてよ
銀グールは一瞬固まったかに見えたが、直ぐ
「最近のグールは食に関しても多趣味になり
ましたからね。」
「あらそう」
「どうです?熱いコーヒーでも」
「ご厚意は感謝するけど、今は飲みたい気分
じゃないの」
「最近お飲みになってないんじゃないですか」
メイサは銀グールを睨んだ。
銀グールの余裕が気に入らない。
上から見下されている気がするのだ。
「私がコーヒーを飲もうと飲まないと、あな
たには関係ないわ、それともコーヒー飲ま
ないと私の味が良くならないの」
「あはは、こりゃ手厳しい。どうしても私は
食べないといけないのかな、メイサさんを」
銀グールはゆっくりメイサに近づいた。
思わずお尻を浮かしかけたメイサに
「座っていいですか?」
銀グールの態度は相変わらず紳士的だ。
「勝手に座ったら?」
「ご機嫌がお悪いようで」
銀グールは首を振りながら、ゆっくりソファ
ーに座った。
「当たり前でしょ、人をさらってきて、こん
なガラスの牢に閉じ込めて、機嫌が良いわ
けないでしょ」
メイサは又お尻を浮かすと
「私を食べるんだったら早く食べなさいよ」
そんなメイサの言葉を無視して
「どうです、ひとつゲームをしませんか」
「ゲーム?」
話を見事にはぐらかされた。
それも気に入らない。
「推理ゲームです」
「そんな事あなたとする義理はないわ」
「まあそう言わず」
「まず名乗りなさいよ、人をさらってきて、
仮面かぶって、ゲームしようなんて、頭
おかしいんじゃないよ」
「この混沌とした世界に住んでいたら、頭もお
かしくなりますよ。メイサさん、そうは思わ
れませんか」
「だから、まずは名乗りなさいよ」
メイサは立ち上がった。
こんな、のらりくらりとした、話し合いは性に
合わない。
結論が欲しいのだ。
私をどうしたいというのだ。
食べたいのなら、早く食べてよ。




