68話 他の物でも食べられるの?
メイサは檻の中を一周し、出る方法が無いこと
を確認すると、ソファーに沈み込んだ。
ゴージャスなソファーだ。
今更ジタバタしても仕方がない。
世の中なるようにしかならない。
それよりもこの研究室の方が気になる。
メイサが使っている研究室より明らかに最新の
機械が備え付けられている。
素晴らしい機械は人間側にもあることはある。
ただ、それを使いこなす科学者がいないのだ。
皆自分の命をグールから守ることだけに集中し
科学の発展など眼中になり。
メイサはガラス檻の向こうを眺めながら腕組み
をした。
腕組みをし、思いをめぐらした。
何故誰もいないのだ。
何をしているのだ。
私に用があるのなら、早く現れなさいよ。
メイサは少しずつ、イラついてきた。
第一、何か飲み物ぐらい用意しておきなさいよ。
お客様なんでしょ、私は。
イラつきはしていたが、精神は冴えわたってい
た。
考えたくはないが、あの銀グールの体に包まれて
メイサの中の何かが変わった気がするのだ。
それが何かとはわからないが、何か、こう、微
妙な感覚がしてならない。
その時だった。
いきなり目の前に銀グールが現れた。
狐の面をかぶっているが、間違いなくメイサを
ここに連れてきたグールだ。
まるで降って湧いたような出現だ。
漫画などでは、よく見かける、瞬間移動というや
つだ。
狐面のグールは黙ったままメイサを見つめている。
「なあにそのお面、センス悪いわよ」
言いながらお尻を浮かせ少し座る場所を移動した。
狐面の銀グールが近すぎるのだ。
「レディの前に現れる方法としてはセンスない
わね」
「そうですか、センス無いですか」
狐面の銀グールは頭を掻きながらもう一度メイサ
を見た。
思い出したように
「どうです、何か飲み物でも」
銀グールの視線の先には小さなキッチンがあった。
「あら、グールは人間しか食べられないと思ってた
のに他の物でも食べられるの」
辛辣な一言だ。




