50話 半魚人との戦い
三体の半魚人を睨みながら千秋と力也は背を合
わせた。
千秋の手はしっかりと華の手を握っている。
「俺達武器持ってないもんな」
力也が寂しそうに指を触った。
ハンターの追跡を逃れるためGPS機能の付い
た指輪はゴミ箱に捨ててきている。
「危ない」
千秋が力也の身体を突き飛ばした。
その横を半魚人が通り過ぎると、千秋達を睨み
つけた。
手には貝殻で作ったのだろうか。槍を持ってい
る。
半魚人は又千秋と子供めがけて飛びかかって来
たが、その半魚人の手を、横から力也が千秋達
の前に躍り出てつかむと投げ飛ばした。
「千秋、こいつらの表面カメの甲羅のように硬い
ぞ」
千秋をかばうように力也が立っている。
「みたいね」
言いながら千秋は華を抱き上げた。
片手で薬瓶から薬を一粒取り出すと、それを
力也に渡した。
「薬か」
力也は受け取りはしたが、飲むのをためらっ
ている。
飲み続けるとひょっとしたら、強くはなるが
グールになってしまうのではないかと、懸念
しているのだろう。
「どうする?」
「この状況じゃあ飲むしかないでしょう」
「そりゃそうだが」
「じゃあ力也がこの子守っててくれる、私が
戦うから」
千秋が前に出ようとするのを力也は遮ると
「いい、俺が殺る」
言い捨て、薬を口の中に放り込むと半魚人に
飛びかかって行った。
「想像すれば、身体の一部が武器に変化する
わ」
千秋の言葉を待たずして、力也は左手を大鉈に
変化させると前二匹の半魚人をまたたく間に粉
砕した。
残った一匹は思わぬ力也の実力に驚いたのか凄
いジャンプ力で大きく後退した。
と同時に白い煙が半魚人から湧き上がると、当
たりは霧にかかったように真っ白になった。
「力也気をつけて」
千秋は華を抱きしめたまま大声で霧に向かって
叫んだ。
案に反し、霧が晴れるまで半魚人は何の攻撃も
してこなかった。
しかし霧が晴れたそこには、とんでもない光景
が広がっていた。




