45話 俺は仲間を見捨てることはしない
黙ったままの千秋を心配したのか力也が小さく
聞いてきた。
「千秋が反乱軍に来るなら俺も行く」
「私が反乱軍に?」
千秋は力也を見返した。
その目はどうやら本気のようだ。
「やめとくわ」
千秋はきっぱり断った。
「何故だ」
「私戦いそれ自体が嫌いなの。ハンターも抜ける
し、反乱軍にも入らない、もう戦いは御免!」
「嘘だろ、千秋戦いの最中が一番輝いて見えてた
けどな」
「私は嫌々、戦っていました」
「そうかなあ?」
腕組みしながら力也が苦笑している。
「本気でそう思っているのか」
「そうよ」
「千秋らしくない」
「何よその言い方、力也に私の心わかるの」
「わからないが、千秋が戦いをしないと言って
も、ハンターが千秋を放っておかないと思う
けどな」
図星だ。
考えていないようで、肝心なところはちゃんと
考えている。
力也の言う通り、ハンターは、いや、幽厳村正
が一度狙った獲物を途中であきらめるはずが無い。
千秋を捕まえるまで地の果てまで追いかけてくる
だろう。
それを力也は見抜いている。
「千秋がどんな理由で追われているのか俺は知ら
ない。しかし一度目をつけられたら逃れられな
い」
「だからどうなのよ」
「一人より二人だ」
「えっ?」
力也がテーブル越しに体を近づけてきた。
「俺も追われている」
「力也は反乱軍に戻ればいいじゃない」
「千秋が来れば俺も戻る」
「私は嫌だと言ったでしょ」
「じゃあ俺も行かん」
千秋は黙った。
力也の真意がわからなかったのだ。
「なんで、私が反乱軍に行かないと、力也も行
かないの」
「俺は・・・」
力也は一度千秋から目を外すと、頭を振り、再
度千秋を睨んだ。
瞳が紫に輝いていた。
「俺は仲間を見捨てることはしない」
テーブルを叩こうとしたが、慌てて途中でやめ
ると、そのまま椅子に体ごと沈めた。




