44話 ハンター組織との決別
「俺達ハンターの役目は何なんだ。一般市民を
守ることだろうが、それがどうだ、今じゃこ
の有様だ。あいつだ、幽厳村正のせいだ。あ
いつが来てからハンター組織は狂っちまった。
今のハンター組織なんか無い方がましだ」
千秋も全く同じ思いだ。
同じ思いの人間が身近にいたとは、それが力也
だったとは、驚きと言うより、新鮮な出会いに
近い気持ちだ。
「じゃあ反乱軍の目的はハンター組織を壊すこと」
「よく知らん」
千秋は吹き出した。
目的も知らず反乱軍に入るなんて、やはり力也ら
しい。
「敵の敵は味方だ」
どうやらハンター組織が気入らないから、その敵
の反乱軍は味方だと、そんな軽いノリで入ったん
だろう。
「ふー」
千秋は軽くため息をついた。
放っておけないぞ、この男は。
見かけは怖いが、その心根は優しい。
壊れそうに優しすぎる。
幽厳村正の隊に編入された時すでに力也は幽厳の
部下だった。
てっきり幽厳村の意のままに動く者だと思ってい
たから、敢えて係わりを避けていた。
それがどうだ。
反乱軍のスパイだとは。
しかもその理由が、ただ、今のハンターの組織が
気に入らないと、まるで子供の論理だ。
しかし、その感性は間違っているとは思わない。
現に千秋だって最近は、このままハンター組織で
働くことに疑問を抱いていたのだから。
ハンター組織から拘束されるいわれはないが、あ
の組織に正義はない。
今のハンター組織に、一度疑われれば、その先に
は死しかない。
素直に捕まる訳にはいかない。
千秋の抗弁など聞く耳を持っている者はいない。
残虐な凌辱を楽しむ連中に、常識を求めるのは
無理だ。
目をそむける拷問の対象者に自分がなるぐらいな
ら、戦って死んだ方が楽だとも思う。
そんな組織で自分は働いていたのだ。
軽蔑し、関わりを避けていようと、ハンターであ
れば、同罪だ。
力也が反乱軍に(感性)で入ったことは、考えよ
うによれば、千秋の見て見ぬふりより立派なこと
ではないのか。
今のハンター組織は、力也が言う通り腐りきって
いる。
いい機会だった。
ハンター組織の方から、千秋を追い出してくれた
のだから。




