42話 ぶっ殺してやる
製造方法を敢えて書き残さなかったのはスパイ
対策ではない。
幽厳村正対策だった。
メイサも浜田も幽厳村正を信じてはいなかった。
必要な時は怖いぐらい優遇してくれるが、利用
価値が無くなった時の仕打ちは酷い。
特に幽厳村正の中枢近くにいればいる程、その
仕打ちは残酷なものだった。
いずれにしても、最後は殺されるのだから一緒
だが、その殺し方の残忍さが恐怖だった。
だから浜田が製造方法を書類に残そうと言った時
メイサはやめようと提案した。
いつ何時、幽厳村正が自分達を見限るかわからな
い。
製造方法は幽厳村正に対する安全対策でもあるの
だ。
幽厳も、メイサが製造方法が頭の中にしかない事
をつげた時、メイサの企みを瞬時に察知したが、
それをおくびにも出さず
「さすがだ」
とメイサ達の考えを褒め称えた。
窓際に立ち、腕組みをし、幽厳村正は遠くを見つ
めた。
(そろそろ新しい科学者をどこかから調達する必要
があるな)
そう思った時、幽厳村の表情が凍り付いた。
「嘘だろ・・・」
呟くと
「メイサ逃げろ!」
慌てて大声で叫んだ。
叫ぶ幽厳にメイサは立ち上がりはしたが、何事が
起きたか確認しようとした。
「ガシャーン!!」
窓ガラスが割られ、いきなり銀グールが飛び込んで
きた。
20階建ての20階にあるフロアに窓から飛び込んでく
るグールがいるなど、最初から想定外だ。
「あいつらだ、あの銀グールだ」
幽厳村正は自分が震えていることに気付いた。
ウソだろ、この俺が、この俺様が震えるなど・・・
「メイサ」
ガラスの破片をかわすため、床に伏した幽厳
は慌てて立ち上がるとメイサを探した。
さすがに震えは止まっていた。
見れば、メイサは銀グルに体を包みこまれ気を
失っている。
まさかこんな早くメイサを拉致しに来るとは
グールを侮っていた
銀グールはメイサを包み込んだまま窓際に行くと
そのまま、外に飛び出した。
「待ちやがれ」
幽厳村正は銃に赤い弾を詰め込むと銀グルーの後を
追おうと窓に足を掛けたが、慌てて部屋の中に転が
り込んだ。
20階だ。
飛び降りれるはずがない。
外を見れば銀グールが飛んでいる。
「やはり、あいつらだ、あのグールだ、千秋に薬を
渡したあの銀グールの片割れだ」
幽厳は呟きながら窓枠に足を掛けた。
「て、てめえら、全部、ぶっ殺してやる!」




