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3話 許されないルール

液状グールが振り向いたそこには三人の人間

が立っていた。


二人の男と一人の女。

ハンターと悟ったのだろうか液状グールは女

の身体を引きずりながら、ハンター達と距離

を取った。


「私殺るわよ!」

「まて千秋」


細身で長身の男、幽厳村正がけだるそうに止

めた。


「何言ってるのよ、このままじゃあの女性す

 べて食べられてしまうわよ」

「いいじゃないか、どうせもう死んでいるん

 だから」


栗原千秋は顔を歪ませながら、幽厳村正を睨

むと、長い髪を手でかきあげ救いを竹内力也

に向けた。


大きい。そして真四角な体躯の力也は両手を

広げ俺は知らないというポーズを取った。


「もういいわ、」


千秋は親指にはめていた指を摘まむと、小さ

く叫んだ。すると指輪から鋭く光る長剣が飛

び出してきた。


この剣が操れてこそのハンターだ。


「千秋やめとけと言うのに、聞けないのか、

 グールは獲物を喰らってる時が一番やばい

 ことぐらいお前だって知ってるだろうが」

「そうだ幽厳さんの言う通りだ、グールが人

 を喰らってる時は、通常のグールの三倍の

 力が出ることはお前だって過去の戦いから

 経験済みだろ」

「喰い終わったら、力は元に戻る、難なく退

 治できる、それまで待てといっているのだ」


相変わらずけだるそうに、幽厳が言ったが、

まったく緊迫感が無い。


「そんな事はわかってるわよ、でもあんた達

 なんとも思わないの、女性が目の前で食べ

 られているのよ」

「今更、何を殊勝な事言ってるんだ、そもそ

 もその女、こんな路地をあるくことがどれほ

 ど危険な事か、わかって入ったんだから自

 業自得だ」

「ひ、人でなし!」


唾を吐き捨てると栗原千秋は二人から離れる

と、干からびた女の身体を咥えたままの液状

グールの前に立った。


グールは千秋達の存在を無視し、女をバリバ

リと喰らっていく。

千秋はそれを歯を食いしばって見ていた。

悔しいが、幽厳村正の言う事は正論だ。

今の千秋の実力では、力が三倍も増したグー

ルを倒すことはできない。

二人の協力が無い以上、食べ終わるのを見守

るしかない。


怒りに任せ、人を喰らっているグールに立ち

向かい逆に喰らわれてしまったハンター達は

数知れずいる。


グール退治は、人を喰らった後が一番の常道と

されていた。

勿論喰らう前でもいいのだが、その時は半興奮

状態にグールもなっているので五割増しの力に

はなっている。


従って、ハンターの間では、とりあえず人を喰

らわせ、その後退治するのが基本と暗黙のルー

ルが出来上がっていた。


人を助けるために組織されたハンターだが、

実は、グール退治が目的という人間には言

えない闇ルールには千秋は前から腹立たしく思

っていたが、ハンターとて命は惜しい、グール

一匹退治に、人一人の犠牲はしかたない、これ

は暗黙のルールと言うより、ハンターの命を守

る苦肉の策でもあった。

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