38話 野望
「できたのか」
箱から赤い弾丸を摘まむと、幽厳村正は目の
前にかざした。
「テストはしたのか」
「勿論よ」
メイサは手袋をはめると弾丸を幽厳村正から
取り上げた。
「気をつけて、人間にも害があるかも知れな
いから」
「どういう意味だ」
幽厳村正は慌てて手をズボンで拭いた。
「触れるだけで、指が欠ける現象何度も起き
ているから」
幽厳村正は自分の手を見た。
皮の手袋をしている。
道理で、メイサが何も言わなかったはずだ。
「この弾でグールは死ぬのか」
「死ぬかどうかはわからないけど、攻撃を一定
時間無力化するのは間違いないわ」
「そうか・・」
幽厳村正はもう一度弾丸を手に取って目にかざ
した。
「触れるだけで症状が出ると言ったが、じゃあ、
この弾から、人間かグールかの識別装置みた
いなものができないのか」
「残念だけど、そこまで信憑性はないわ。グール
にほぼ100%効くとは思うんだけど、人間にも
影響が出るから識別薬としては信頼性に欠けるの」
「そうか、で、こいつをグールにくらわすとどうな
るんだ」
「命中した部分三十センチ四方が灰になるは」
「つまりグールの身体が破壊されるわけなんだな」
「そう、普通グールは体を攻撃してもすぐ蘇生
するでしょ、でもこの弾を使えば、少なくとも
24時間は再生を抑えられるの」
「そりゃ凄いぞ」
幽厳の目が輝いた。
「ハンターでなくとも、この弾さえ使えば普通の
人間でもグールを倒せるって事だな」
メイサも嬉しそうに頷いた。
「この弾をあなたの会社で独占販売すれば」
幽厳は目を細めた。
メイサの言ってる意味が分からなかったが合点が
いくと
「俺の会社じゃない、親父の会社だ」
「どちらにしても、あなたにも利益が転がり込んで
くるんでしょ」
「この研究を知ってるスタッフは?」
「あたしと浜田岳だけ」
「他の連中は?」
「誰も知らないわ」
「そうか、お前と浜田だけなんだな」




