37話 新しい武器
「で、お前の話とは何だ」
幽厳村正も自分の椅子に座り、机に身を乗り出
すと、メイサに微笑んで見せた。
微笑みの真意が、栗原千秋の話はこれで終わり
だと釘を刺していることはメイサにもわかって
いる。
しかし、やはり千秋達の事が気にかかる。
少し黙っていると
「力也は反乱軍のスパイ、千秋はハンター隊員を
傷つけた罪だ」
「スパイ?」
幽厳の言葉に、驚きはしたが、思わず顔がほころ
んだ。
「あの力也がスパイ?反乱軍の」
「ああ、俺は最初から知ってはいたがな」
思わず笑ってしまったが、確かにあの力也ならあり
得るかもしれない。
正直の上に馬鹿がつく。
最初からハンターの仕事など無理だとは思っていた
が、何せ実力がある。強いのだ。
それにしても、千秋と力也が。
ありえない事だ。
そんな気持ちをおくびにも出さず、メイサは足を
組み替えた。
幽厳村正に少しでも疑われることは致命傷だ。
メイサにもわかっていた。
最近のハンター組織が(いびつ)になってきてる
事が。
「で、お前の話は何なんだ」
「これ」
メイサは内ポケットから銃を取り出すと、銃口を
幽厳村正に向けた。
「内規法42条違反であなたを射殺します」
内規法42条とは喫煙の禁止だ。
「おいおい、葉巻吸ったぐらいで射殺はないだろう」
「この法規であなた何人ハンターを処刑したの」
幽厳村正の顔が歪んだ。
確かに過去、このしょうもない法規で幾人ものハン
ターを処罰してきた。しかしそれは、処罰する理由
がそいつらにあったからだ。法規なんてなんでもい
い。
とにかく処罰さえできれば。
歪んだ顔の幽厳村正を見て、メイサはわざと声を出
して笑うと
「あんた最近評判悪いわよ、気をつけなさいよ」
銃をテーブルの上に置くと、ポケットから箱を出し、
蓋を開けた。
箱の中には真っ赤に輝く弾丸が入っていた。




