35話 ホントなのその話
「まだあるでしょう、言いたいことが」
「まるで、心理学者気取りだな」
「言ったでしょ、資格持ってるって」
メイサはソファーに座った。
白衣の裾が少しめくれ、太腿がチラリと覗くと
自然、幽厳の視線もそこに移った。
慌てて、視線を窓際に移した幽厳は、小さく咳
をすると
「栗原千秋を知ってるか」
「知ってるわよ、同期だから、今はあんたの
部下でしょ」
意外な名が出たのでメイサは驚いている。
どうやら、千秋と力也の裏切りをメイサはまだ
知らないらしい。
「指名手配がかかった」
「えっ?」
まだ話が飲み込めていないようだ
「栗原千秋と竹内力也に指名手配がかかったんだ
よ」
「嘘、、」
メイサは表情を曇らせた。
「あいつら皆、お前と同期だから一応知らせてお
こうと思ってな」
「私に、わざわざ?」
何かを感じたのだろう。
メイサは立ちあがると、ゆっくり幽厳に近づいた。
幽厳村正が同期と言うだけで、わざわざ情報を教
えるなどありえない事だ。
何か下心があるに違いない。
千秋の姿が蘇った。
幽厳村正の配下になってからは一度も会ったこと
はない。
それまでは、仲良しだったのに、、。
フット閃いた。
「私を疑ってるの?」
「まさか」
メイサの言葉に幽玄の方が驚いた。
そうか、そういう考え方もあるのかと改めてメイ
サを見ると
「俺がこの施設で信用してるのはお前だけだ」
「怪しいもんね、でも、まあ嬉しいと言っておく
わ」
メイサは幽厳村正の背後に回ると、さらり首を
一筋指で撫でると、またソファーに戻った。
「で、容疑はなんなの?」
「それは言えん」
「千秋も、力也も、ハンターとしては一流だし、
忠誠心もぴか一だったわ、指名手配になるよう
な事するかなあ?」
「逃げた事が事実を物語ってる」
何か言いたげなメイサだったが、その言葉を飲み
込むと
「で、私からあの二人の情報を聞き出そうと?」
「そうじゃない、お前があの二人とは疎遠になっ
てることぐらいトウノ昔に知っている」
幽厳村正の表情が険しくなった。
疎遠、確かに疎遠になった。
メイサが開発する武器が、結局この戦いを一層泥
沼化しているだけだと、千秋がつぶやいたその一
言がメイサには辛辣に響いた。
あの時、言い争い、結局、その後千秋が幽厳村正
の配下になると、、
二人とも忙しすぎるのだ。
疎遠になったのは、多忙のせい。
そう言い訳し、メイサは今日まで千秋を避けてきた。
その千秋が指名手配。
何があったというのだ。




