30話 武器捨てるわよ
「ところで力也、反乱軍の仲間は大丈夫なの」
反乱軍の急襲を力也に教えたのだが、無事逃
げられたのか少し心配になっていたのだ。
捉えられ、あの拷問を想像すると胸が痛む。
「千秋は何故反乱軍の味方をするんだ」
力也が上目づかいで聞いてきた。
「別に味方してるわけじゃないわよ、嫌なの、
あの捕まった人たちがされる拷問が」
力也も目を伏せると
「一体いつから、ああなっちまったんだろう」
「いつからって?」
「昔は違っていた。捕虜に対しても人間的な
扱いしていたんだが」
そう言うと、一つ舌打ちをし
「あいつだ、幽厳村正、あいつが来てから、
全員に残虐性が帯びてきたんだ」
「幽厳が?」
「あいつは、あいつの残虐性は異常だ、多分他
の奴らも、幽厳村正が怖いから、従ってるだ
けだと」
「違うわ!」
千秋は力也の言葉を遮った。
「幽厳一人の力でハンター全体に残虐性を持た
すことなんてできないわ、あれは個人の中に
潜んでいた本質が浮かび上がって来たものよ、
何か、こう人知を超えた偉大な物の変革によ
るもの、そんな気がするの。私には」
「相変わらず、千秋は難しいこと引っ張り出し
てくるよな、俺にはそんな高尚な事わからん、
ただ言えるのは、幽厳村正が来てから、間違
いなくハンター組織は変わったってことだ。
これだけは間違いない事実だぞ」
「で、あなたの仲間は大丈夫なの」
「大丈夫だと思う。俺達の組織は組織と言う程
立派なもんじゃない、逃げ足は速いと言うか、
簡単だからな」
「だといいんだけど」
「千秋が携帯握り潰したから、連絡できないも
んな」
「何、それ嫌味」
言いながら、千秋は思い出したように武器を収
納している指輪を外すと近くにあったゴミ箱に
放り込んだ。
「力也も外しなさい」
「なんでだよ、これ放ると武器が無くなるじゃ
ないか」
「馬鹿ねえ、私達は追われているのよ、ハンタ
ーから、この指輪にはGPS機能が埋め込ま
れてるって知ってるでしょ」
「ああ、そうか」
力也も指輪を外すと、同じようにゴミ箱の中に
放りこんだ。
「さ、ここから離れるわよ、もうすぐ又ハンタ
ー達がくるはずだから」
「どこに行く気なんだよ」
「そんなのとりあえず、ここから離れながら考
えましょ」
千秋の行動はいつも早い。
思い立ったら、もう動き始めている。
「おい、待てよ、千秋、待てってば、俺を置い
てかないでくれよ
慌てて千秋の後を追って行った。




