28話 力也の復活
力の差は圧倒的だった。
まるで大人と子供の喧嘩だ。
千秋は両サイドからかかって来たハンターを軽
く跳ね除けた。
軽く触れたつもりだったが、二人のハンターは
屋上の際まで跳ね飛ばされた。
想像以上の力の差だ。
千秋の力に他のハンター達がたじろいた。
一様に狼狽の表情が漂っている。
二人、又無謀にも千秋に挑みかかっていたが
両腕を折られその場でのたうち回った。
これは効いた。
他のハンター達は、数歩退くと、交互に顔を見
合わせている。
明らかに(恐怖)という表情を漂わせている。
千秋が一歩進むと、ハンター達は数歩退いた。
闘いを避けている。
横目で力也を見れば、千秋の闘いを見て驚愕
はしているが、その体からは紫の陽炎が漂っ
ている。
苦痛で歪んでいた表情も、今は精悍そのものだ。
薬は間違いなく効いた様だ。
力也はそのまま一番先頭にいたハンターを掴む
と投げつけようとした。
「力也加減して、そのまま投げたら地上に落下
するわよ、その人」
「あん?」
言われたことを理解したのだろう。
力也は男の横っ面をひとはたきすると、男を
ハンターの集団にそっと投げ返した。
横面を張られた男は口から泡を出して気絶し
ている。
期せずして、どよめきがハンター達から沸き
起こった。
完全に戦意喪失状態だ。
殺すことには興味を示すが、自分が殺られる
側になると、途端に腰が引ける。
最近のハンター達の特徴だ。
「千秋、完全に俺復活したぞ」
千秋は時計をチラッと見た。
薬を飲んでもう二分立っている。
「このまま逃げるわよ、力也、私についてこ
れるかしら?」
千秋はわざと挑発的に言うと、全力でその
場から立ち去った。
「馬鹿野郎、回復した俺が女のお前にまける
わけがないだろ」
力也も千秋の後を全力で追った。
意識が目の前のハンター達から、千秋の挑戦
的な言葉に移ったのだろう。
驚いたのはハンター達だ。
いきなり千秋の姿が目の前から消えると、続
くように力也の姿も消えたからだ。
ハンター達の動体視力では千秋達の姿を追う
ことが出来なくなっていたのだ。




