表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

247/253

246話 千秋対マーヤ

「おい、マーヤ、なんで俺達は四人なんだ」


胡坐をかいたままの亜門源兵は目の前にいる

千秋とメイサを睨みつけながら頭を撫でた。

テラテラと頭が光っている。


「だって二人の内どちらがどちらを選ぶか決

 めてなかったでしょ」


愛くるしい瞳を亜門に向けた。

まるで女の子のような仕草だ。

本来は一人ずつの空間に閉じ込めるはずなのに、

四人が一緒の空間にいる。


「こんなんだったら、俺は菜々緒様と一緒の所

 に行かせてくれたらよかったのに」


「そんなの無理でしょうに、菜々緒様があの筋

 肉男を選ぶのは当然ですし、あの場面で亜門

 さんなど一緒の空間にしたら、僕は殺されま

 すよ」


「だわな、それにしても、あの男は死んだはず

 じゃなかったのか」


「死んだのは間違いありませんよ、僕、居まし

 たからその場に」


「じゃあ何故いるんだ」


「他人の空似」


「別人か?」


亜門が顎をなぞりながら一人、納得している。

その横では意味も分からず千秋とメイサが呆

れて二人を見ていた。


どうやら美し女が連れて行った力也の事を話

しているらしい。

力也に妙に気があるようだったが、目の前の

二人にもその訳がわかっていないようだ。


「ちょっと、あんた達、なによ私達をこんな

 ところに閉じ込めておいて、二人で訳の分

 からない事ペラペラ喋って、いい加減にし

 なさいよ」


千秋が亜門とマーヤを睨みつけた。

メイサが千秋の背中から頭を出すと


「そうだ、そうだ」


と小さな声で同意した。


「メイサ、あんたもあんたよ、いつまで私の

 後ろに隠れているのよ、出てきて、あの二

 人に言いたいこと言ってやりなさいよ」


「あ、私はいいわ、千秋、千秋ちゃん、あん

 たに任すわ、あの二人」


「もう、メイサ、あなたも強くなったはずよ、

 ちゃんとしなさい、ちゃんと」


「無理無理、私お嬢様育ち、メイサは箸より

 重い物持ったことないし、千秋ちゃんに全

 て任せちゃうわ」


「お嬢様、、ん?、メイサだと」


突然、亜門が動きを止めると、メイサをガン見

した。


「ちょ、ちょっと、千秋、あのハゲ頭私をガン

 見していない」


「あなた昔からおかしな男に惚れられる運もっ

 てたもんね」


「なによ、その言い方、でもおかしな男にでも

 惚れられるだけましよ、千秋なんかからっき

 しじゃないの」


「あら、おかしな男に惚れられてるのは認めるわ

 けだ」


「ち、違うわよ、行きかう男すべてが私の魅力に

 惑わされるのよ、千秋とは次元が違うわよ、次

 元が・・・きゃぁ!」


メイサが飛び上がって驚いた。

気が付けば目の前に禿げ頭がある。

亜門源兵がメイサの傍に来、食い入るように

眺めている。


「ちょっと、止めてよ、何よ、痴漢よ、ハラス

 メントよ、助べえ・・」


慌てて亜門から離れると、又千秋の背中に隠れた。



「あなた何してるの、気持ち悪がってるじゃない

 の、メイサが」


千秋も胡散臭気に亜門を睨んだ。

よく見れば禿げて怖そうに見えるが、目元が意外

と可愛い。

悪い人ではない、千秋の直感がそう叫んでいる。


ギロリ千秋を睨む亜門は


「お前は関係ない」


千秋を払いのけると、もう一度しげしげメイサ

を見た。

やおら振り向くとマーヤに


「俺をこの女、いや、女性と一緒にしてくれ」


「あれ、亜門さんそっちでいいんですか、亜門

 さんこっちの女の方がいいと言ってたじゃな

 いですか、だから僕、こうして四人を固めた

 のに・・」


不服そうにマーヤは唇を尖らすと


「じゃあ、お互い楽しみましょ」


パチン、指を鳴らすと、再び亜門とメイアを

紫の玉が覆い尽した。

玉は、そのまま内側に絞り込まれ、小さくなって、

やがて空間の中に溶けてしまった。


「ちょっと僕ちゃん、何したのよ、メイサを戻

 しなさい」


「ぼ、僕ちゃん?」


苦笑するマーヤに


「子供の癖に、オイタするんじゃないの、早く

 メイサを戻しなさいってば」


「子供でもあなたよりは強いですよ」


マーヤは鷹揚に首を振った。

余裕を見せたつもりだったが、気が付けば千秋

がいつの間にか喉仏に剣を突きつけている。


一瞬驚いた表情を見せたマーヤだったがその切

っ先を指でつまむと、ゆっくり喉から外し


「ダメですよ、まだゴング鳴ってないでしょ」


「いいからメイサを戻しなさい、僕ちゃん、い

 い、お姉さんは本気なのよ」


今度は剣の切っ先が少しマーヤの喉仏に突き刺

さっている。

赤い滴がススッと垂れるとマーヤの喉仏が大き

く動いた。


「み、見えなかった、今の剣捌さばき」


マーヤの瞳に微かだが、恐怖の色が宿った。


「な、なんなんだ、この女は」


マーヤは慌てて距離を取った。

千秋がこんなスピードで動けるとは聞かされて

いない。

これは間違いなく八雲紫やぐもゆかりの術だ。

嘘だろ・・・


「早くメイサを戻すか、私をメイサの所に連れて

 行きなさい」


「行きたければ僕を倒すことですね」


「言ったでしょ、お子様は相手にしないって」


また、マーヤの傍に現れた。


「あなた、八雲紫やぐもゆかりの術が使えるのですか」


八雲紫やぐもゆかりの術?」


千秋にはマーヤが何を言ってるのか、さっぱり

わからない。

ただ、目的地を思い、そこに行くと念じると、い

つの間にそこに着いている、雪が使っていた、瞬

間移動にも似たこの方法、気が付けば千秋も、イ

メージするだけで使えるようになっていた。


「少し見直しました、でも僕の方が強いことに変

 わりはありません」


マーヤは手をこねると、手のひらの中にいくつも

の紫の玉を作り出した。どれもがパチンコ玉ぐら

いの大きさだ。


その弾を手の中で弄びながら、


「じゃあ、行きますよ」


マーヤは紫の玉を一つ千秋へ弾き飛ばした。

その玉を千秋は難なく手で跳ね飛ばした。

・・・が、抵抗感がまるでない。

手を見てみると手には小さな穴が開いている。


「なあにこれ」


すかしてみれば開けられた穴からは向こうが見

える。完全に貫通していた。


「何よこれ」


回復術で穴を塞ごうとしたが、塞がらない。


「えっ?」


「無理です。回復はできません。その穴は次元

 の穴ですから」


「次元の穴?なに言ってるのよ、僕ちゃんは」


千秋はマーヤを揶揄すると穴の開いた手をヒラ

ヒラさせた。

痛みや違和感が無いから今取り立ててどうこう、

する必要はなさそうだ。


「でもその開いた穴の数が多くなったらどうし

 ますか」


マーヤは立て続けに十数発の玉を投げてきた。

辛うじて大半はかわしたが、二発ほど脇腹に当

たった。

痛みは全くないが、目をやれば脇腹にやはり、

小さな穴が二つアイテいる。


「その穴を塞ぐことはできません。あなたは永

 遠に穴が開いたまま暮さないといけなくなり

 ましたよ」


「何意味不明な事言ってるのよ」


言いながらも千秋は脇腹に指を差し込んで見た。

指は穴を抵抗なく通り過ぎるが、痛みはやはり

何もない。


「あなたの身体は、私が作り出した亜空間に漂

 っています」


困惑気味な千秋にマーヤは面白がって続けざま

玉をなげつけた。

しかし今度は全ての玉をかわし切るとまたマー

ヤの喉仏に剣を当てた。


「君の作った次元なら君が死ねば戻る訳でしょ」


途端マーヤの姿が消えた。


八雲紫やぐもゆかりの術は私も使えるんで

 すよ」


言いながらマーヤはまた手をこね、紫の玉を作り

始めた。


「オバカ!」


突然母の声が頭の中に響いた。

母が現れたのだ。


「母さん!」


言ってる間に、マーヤが繰り出した紫の玉が千秋

の顔目がけて飛んできた。

とてもすべてをかわし切る事はできない。

「しまった!」

と思った瞬間、突然身体が黄緑色に光り輝くと飛

んできた紫の小玉を全て弾き返した。

気が付けば、穴の開いた場所も全て元に戻っている。


「おバカさんね。相手を少年だと思って舐めてるか

 らそうなるのよ」


「舐めてなんかないわよ」


嘘仰おっしゃい、舐めてるみたいだけど、千秋あの子に軽

 くあしらわれているじゃないの、悔しくはないの」


「うわ、母さん過激!」


しかし千秋の声は弾んでいる。

母が助けに来てくれたのだ。


「母さん助けにきてくれたのね」


「もう、いい加減にしなさい、あんたが死ねば私

 も消滅しちゃうんだから、助けるのはむしろ千

 秋が母さん助けるんでしょ」


「でも、あんな漫画みたいな攻撃、どうしたらい

 いのよ」


「あの子の攻撃はもう大丈夫、効かないから、

 黄緑のシールドは紫の攻撃を弾く効果があるの」


確かにその通りだ。

マーヤが焦るように繰り出す紫玉の攻撃は全て弾

き返している。


「こんなシールド私持ってないわよ、母さんが出

 してくれたの」


「言ったでしょ、千秋の体の中には色んなミトコ

 ンドリアの核があるって、これもその中の一つ」


「母さんが手なずけてくれたの」


「千秋言葉を慎みなさい、手なずけるなんて、協

 力してくれてるのよ、黄緑バリア、ミトコンドリ

 アの核さんは」


「格さんだなんて、水戸黄門みたい」


「お前チャラケてる場合じゃないだろう」


「他に助っ人のミトコンドリアちゃんはいないの」


「仲間は自分で従えるものよ、この子は、私がか

 ろうじて、もう、無理やり頼んで仲間になって

 くれたんだから」


「ついでにあの生意気な小僧やっつけるミトコン

 ドリアちゃん紹介してくれない?」


「もう、無理、母さんはもう帰るわよ、あとはあん

 たで考えなさい、それと、これも聞いた話だけど、

 色が重要よ」


「なあに、色って?」


「相手が使う反対の色色素が弱点になるんだって」


「ええ?」


「とにかく千秋、私はもう消えるよ、色んなミト

 コンドリアがうじゃうじゃ、出てきたから、怖

 いから、当分でてこれないからね」


無線が突然切れたように、以降母の声はピタリ

と止まった。

何度呼び掛けても返事が無い。

言ったように、もうどこかに避難してしまったの

だろう。


フト目を見上げれば、マーヤがまだ、紫の玉をぶ

つけてきている。

玉の大きさはバレーボールのボールぐらいの大き

さになっていた。


「さて、どうしたもんだろうか、あれ、あの子顔

 真っ赤だ、随分怒ってるみたいだ、わ、、、溶

 けた、嫌だ、何かに変身したわよ・・豹、そう

 だわ、あれ黒豹じゃん」


マーヤは黒豹に変身すると、牙を向け千秋に襲い

掛かって来た。

千秋の喉仏を黒豹が掻き破ろうとしたその瞬間

千秋の両手が、がっしり黒豹の牙を掴んだ。


「やめてよ、喉に傷がつくじゃないの」


千秋は牙を掴んだまま、黒豹の身体をあちこち

に叩きつけた。


牙を持っている手首部分が紫に変色している。

どうやらこの牙に掻き破られた部分も、マーヤ

が作り出した次元に運ばれてしまうようだ。


「次元を操る少年か・・・」


呟きながら頭を振ると、瞬間ある考えが閃いた。


「反対色が有効だと母さん言ってたわね」


千秋は未だ黒豹の牙を掴んだままだ。

手が完全に黒豹から出た唾液で消えている。

しかし感触は黒豹の牙を掴んだままだ。

おそらく離さなければ大丈夫だろう。

ならば・・・


千秋は手首を黄緑のシールドで覆った。

すると消えかけていた手首がボワンと現れ、や

がて完全な手首となって見えるようになった。


やはり黄緑は有効なんだ。

ならば・・・


千秋は掴んでいた片方の腕を剣に変えると、そ

のまま剣を黒豹の喉に突き刺した。

突き刺しと同時に、黄緑の光線を思い切り噴射

した。

黄緑の光線が何なのか、千秋はしらない。

ただ頭の中で、黄緑の光線をイメージそれを一

気に噴射させたのだ。


「ギャッー」


マーヤは黒豹から人間の姿に戻ると、口元を押

えながら、地面をはいつくばっている。

とりあえず、効いた様だ。

直ぐ、マーヤーの上に乗ると剣先を頭のてっぺ

んに当てた。


「負けを認めなさい、さもないと、脳天に今の

 攻撃、力を最大にしてぶち込むわよ」


「あわわ・・降参だ、降参です、参りました」


マーヤは狼狽え強気の言葉は出てこない。

見栄もへったくれもない。

このままでは間違いなく消滅させられる。


千秋の実力がさっぱりわからないのだろう。

弱いと思い手を抜けば、突然、想像を絶する

攻撃をしてくる。

こんな奴、まともに戦えられる相手ではない。

力の振れ幅がとてつもなくでかいのだ。


千秋は、マーヤの背中かから降りると


「さあ、私をメイサの所の連れて行きなさい」


マーヤは尻を突きながら後ずさりした。

千秋の全身から黄緑の光が放出されている。

マーヤにとっては危険信号だ。


マーヤは思っている。

な、何なんだ、この女は、意味が分かんない、

最初は菜々緒様の半分にも満たない魔力だと

思い遊んでいたが、なんでいきなり十倍近く

まで膨れ上がるんだ。こんな魔力、グールが

持ち得る魔力じゃない、何なんだ、、この女

は・・・


「さあ、私をメイサの所につれていきなさい」


千秋は三角になった瞳で、マーヤを睨みつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ