234話 この子危険かも
「雪さんどうしたの!」
頭がはっきりしたのか、血だらけの雪を見て黒
木メイサが雪に駆け寄った。
「大丈夫、返り血だから」
「嘘よ、この頬の傷、どう考えても本物よ」
メイサは雪の頬をなぞろうとしたが、雪はそれ
を軽くいなすと
「あなた達は大丈夫なの」
「私達は大丈夫よ。でもさあ、誰よ、私達を掃
除用のロッカーの中に入れたのは」
メイサは、雪、藤木、千秋を睨みつけた。
睨みつけられ、動揺する千秋を見ると、メイサ
は腕をまくり上げ
「千秋、あんた、あんたね」
「ち、違うのよ、これには訳があるのよ」
「訳なんかどうでもいいわ、なんで掃除用のロ
ッカーに私を放り込むのよ、もっとましなと
こあったでしょ」
「だって、襲撃があったんだも」
「襲撃だと」
力也が目を光らせた。
戦いの話になると無条件で体が反応するらしい。
「じゃあ、雪さんのあの傷は」
メイサは千秋を見た。
ゆっくり頷く千秋を見ると
「あんた回復の技手に入れたんでしょ、早く治し
てあげなさいよ」
「それは・・・」
千秋は雪と目を合わせた。
雪は苦笑しながらも
「いいのよ、私は自分で治すことができるから、
それより」
藤木に目を移し
「あなたは大丈夫なの?」
上から下まで、舐めるように藤木を眺めた。
服はボロボロになっているが、傷はどこにも
ない。
顔色も普通だ。
丸山と戦ったにしてはあまりにも綺麗だ。
当然、栗原千秋が治したのであろうが・・・
気になる事がある。
千秋が雪を回復するために触れて来た時、雪
が掛けていた心を読みとられないシールドに
弾け、お互いがふっ飛んだ。
心を読みとる振動が来ると発動するシールドだ。
千秋に心を読みとる術が芽生えたと言うのか。
信じられない。
ならば・・・
藤木の心を読みとられたのだろうか。
まずい・・・
これはまずい・・・
あの計画がばれてしまう。
いや、もう、千秋は知ってしまったのだろうか。
雪は腕を組むと千秋を睨んだ。
「この子、やはり危険かも・・・」




