227話 戦意喪失の丸山
しばらく荒い息をしていた千秋だったが、すぐ
平常に戻ると、未だ地面に大の字になって息も
絶え絶えの丸山の手を掴むと
「今回復してあげるから」
目を閉じ、丸山に回復の気を送った。
すると丸山は、瞬く間に、回復した。
凄い回復のスピードだ。
丸山の体力が凄いのではなく、千秋の回復術が
凄いのだ。
死にそうな状態から、いきなり普段の状態に戻
され丸山は、何が起きたのか理解できないのだ
ろう。
目の前の千秋を睨みながら、丸山は、ただ立ち
尽くすだけだ。
身体のあちこちを叩き、完全に復活しているのを
確かめると
「お前、何したんだ」
呆れ顔のまま千秋を睨んだ。
「回復してあげたんじゃないの」
「何で回復なんかするんだ」
「死にかけてたからよ」
丸山は言葉に詰まった。
話に、いや会話にならない。
死にかけさせたのは、千秋じゃないか。
その千秋が、死にそうだから回復したと言う。
まるで意味が分からない。
「わからなくてもいいの、でも私はおかげで良
い情報が手に入ったわ」
「な、何だ、何の事だ」
「あなたに私を襲わせたのが幽厳村正だとわか
ったこと」
千秋は、丸山を回復させた時丸山の意識を吸い取
った。
ランダムではあるが、その意識の固まりの中に、
幽厳村正の姿を見たのだ。
ミトコンドリアが言っていた、相手の心を読むとは
この事だったのだ。
まだ、自分の好きな情報が吸い取れるわけではない。
相手に触れ、何の情報かわからないが、とにかく
情報の固まりを見つけ、ランダムにつかんで持って
くる、そんなイメージの情報収集だ。
「馬鹿な、俺は何も喋ってない」
「そうよ、あなたは何も喋ってないわよ、私が勝手
にあなたの記憶をスキャンしただけ」
「記憶をスキャンしただと!」
「そう、だからあなたは私には隠し事ができないのよ」
「嘘をつけ・・・そんな能力が・・・」
いや、ある。
確かにある。
人の記憶を吸い取る、スキャンの能力は。
元木博士が持っていた。
皆はあれは、まやかしだ、事前に情報を収集していて
それをいかにも吸い取っているかのように見せかけて
いるだけだと言っていたが、俺はそうは思わない。
元木が人の心を吸い取る現場を何度も見た。
あれは、まやかしじゃない。本物だ。
その能力を、この女も持っていると言う。
丸山は後ずさりした。
冗談じゃない、これ以上情報を吸い取られてたまるか。
「言いなさい、何故幽厳村正は私を捕えようとするの」
その答えはすでに、ミトコンドリアから聞いてはいた。
千秋が特別だからと。
しかし、丸山からも聞きたい。
それが本当なのかどうかを・・・




