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223話 ミトコンドリア学習

「私は、というよりお前は特殊な人間だ」


「自分で自分を褒めてりゃ世話無いわよ」


「そうじゃない。私達は凄いんだ、私は聞いて

 しまったのだ」


「誰に?どうゆう事?」


さすがにミトコンドリア千秋の言ってることは

わからない。


「私は脳細胞のミトコンドリアだ、正確に言う

 と脳細胞の中にある一つの細胞組織の、その

 又中にあるミトコンドリアの、そのまた一つ

 だ」


「何よその言い回し。まるで家系図を話している

 みたい」


「家系図か、面白い」


ミトコンドリア千秋は笑った。

自分の笑い姿を見ているのは面はゆいものだ。

千秋は頭を掻いた。


「お前はミトコンドリアの事をどれだけ知って

 いる?」


「何にも知らないわ」


「じゃあ少し教えてやる。ヒトにかぎらずミト

 コンドリアは、真核生物と呼ばれるすべての

 生物種の細胞に含まれる細胞内小器官(オル

 ガネラ)のことだ。そして、その主な働きは

 生命維持に不可欠なエネルギー物質ATPを生

 み出すことにある。」


「何それ、難しすぎるわよ」


「まあ、黙って聞け、おいおいわかってくるは

 ずだ。ミトコンドリアは、ほとんどの細胞に

 認められ、通常は一つの細胞中に 数百、数

 千個が含まれている。人体がおよそ60兆個

 の細胞の集合体であるからミトコンドリアの

 総数は数京個になる」


けい?」


「京」は「兆」の次の位だ。とにかく莫大な数

 だ」


「その中の一個があんただっていうの」


「そういうことだ。具体的に、細胞一つあたり

 のミトコンドリア数だが、その細胞がどれだ

 けエネルギー代謝を行うかによって、大きな

 ばらつきがある。例えば脳や筋肉、肝臓、腎

 臓といったエネルギー要求度の高い重要臓器

 の細胞には、数百、数千ものミトコンドリア

 が含まれているが、逆に赤血球やバリア機能

 だけになった皮膚の細胞には、ミトコンドリ

 アもほとんどない。もっといえば、女性の卵

 子には一つあたり、10万個前後という多量の

 ミトコンドリアが含まれている。その一方で、

 男性の精子に含まれてるミトコンドリア数は、

 一つあたり50か100個程度の少数でしかない。」


「つまり莫大な数のミトコンドリアが私の中で

 うごめいているのね」


「そうゆうことだ」


ミトコンドリア千秋は鷹揚おうように頷いた。


ミトコンドリア千秋のミトコンドリア学習はまだ

まだ続く。

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