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222話 お前も座れ

「ちっ!」


大きく変身した明菜を見て千秋は舌打ちをした。


「もうやめなさいよ、どこの誰かは知らないけ

 ど、私の姉さんをもてあそばないで」


大きくなった明菜を見ることで、千秋の理性は

完全にもとに戻っていた。

メイサの訓練で、異種ミトコンドリアが自分の

弱い精神を痛めつけてくることは既に学習済み

だ。


姉の明菜がグール化した時、父を喰った事は確

かに千秋にとってトラウマにはなっていた。

しかしその事を、これ見よがしに見せつけられ

れば鼻白むだけだ。

今更言われても・・・


しかたがないじゃないか。

皆、好きでグールになったわけでない。

グールになれば意識は飛び、自分が喰らってい

るのが誰かなんてわからないのだから。


交通事故みたいなもんだ。

そう割り切らなければ正気は保てない。


大きくなった明菜に向かって千秋は吠えた。


「もうやめなさいって、そんな事で私の精神が

 参るとでも思っているの、むしろ怒りが増大

 するだけよ、あんたがどんな異種ミトコンド

 リアかは知らないけれど、私と勝負したいの

 なら正々堂々、本体を現しなさい、あんただ

 って嫌でしょ、姉ちゃんの姿で私にボコボコ

 にされるのは」


大きく口を開け、巨大な包丁を持った明菜はジ

ッと千秋を睨むと、やがて手に持った大型の包

丁を放り投げると、口に手を当て肩を震わせ始

めた。


「くっくっくっ」


よく見れば笑っているではないか。

笑いながら明菜の姿が溶け、やがて等身大の

千秋が現れた。


「こ、今度は私に化けたのね」


「何を言ってる、これが私の本来の姿だ」


「それは私じゃないの」


「当たり前だろうが、私はお前の中にあるミト

 コンドリアなのだから」


ミトコンドリア千秋が笑った。


「どうゆう事?」


「私はお前であって、お前は私だって事さ」


言ってる事がなんとなくわかる。

やはり自分が自分に言っているからなのだろう

か。


「お前は未だお前の能力を素晴らしさを知ら

 ない」


ミトコンドリア千秋が腰を下ろした。


「お前も座れ」


千秋に座る事を勧めた。

躊躇ためらっていると


「お前に私の脅しは効かぬようだ、だったらもう

 私はお前の軍門に下るしかない、しかし、その

 前に教えておいてやる」


「何を教えてくれると言うの?」


「まあ、いいから座れ」


異種ミトコンドリアは座りながら千秋に微笑み

かけた。

もう戦う気は無いらしい。

殺気も完全に消え失せている。


千秋はゆっくり、異種ミトコンドリアの前に座った。

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