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21話 力也の負傷

幽厳村正と話したくない、本気でそう思って

いた時、力也が近づいてきた。


千秋は自ら、力也に近づいた。


「大丈夫だったの」

「ああ、おれは大丈夫だが、千秋なんだっ

 たんだ、今の闘いぶりは」


力也も同じことを聞いてきた。

当然だろう。

手も足も出なかったグールを、秒殺で粉砕する

と、残りのグールに睨みをきかせだけで撤退さ

せたのだ。


驚くなと言う方が無理だ。


「私にもわかんないの」

「わかんないのって、そりゃないだろう」


その時、少し離れた幽厳村正の携帯が鳴った。


幽厳は、表示をチラリと眺めると、何も言わ

ず、千秋達から離れ、破壊された屋上の階段

を降りて行った。


聞かれたくない話なんだろう。


「ちぇ、相変わらず秘密の多い奴だな、どう

 も好きになれん」


力也の舌打ちに、千秋は驚いた。

今まで力也は幽厳に完全にべったりの人間だ

と思っていたのだ。


「あいたた」


よろける力也に肩を貸すと

力也が呻いた。

見た目以上にダメージが大きいようだ。


「大丈夫なの本当に」

「ああ、肋骨を多少ぐちゃぐちゃにされた

 ぐらいで、まあなんとか生きてるよ」


ずっしりと千秋の肩に体を預けてきた。


「ちょ、ちょっと待ってよ、そんなに寄り

 かかって来たら、私がつぶれるじゃない

 の」

「しかたねえだろ、踏ん張りがきかないん

 だから」

「ほらやっぱり重症じゃないの」

「馬鹿野郎、こんなのかすり傷だ」

「じゃあ、肩外していい」

「ちょっと、ちょいまち」


力也は千秋から離れると屈伸運動をしようと

したが


「あ、痛た、、」


よろけそうになるので、又千秋が肩を貸し

た。


「もう、しかたないわね」

「すまん、すぐ回復するから」

「ばーか、グールじゃあるまし、直ぐ回復な

 んかするわけないでしょ」

「だな、こんな時グールの身体が羨ましく思うよ」


言いながら力也は幽厳村が去った階段を睨むと


「遅いなあいつ」


又舌打ちをした。

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