213話 面白いぞこの女
丸山は軽く千秋の攻撃をかわした。
攻撃とはいえないくらい鈍い攻撃だ。
こんな攻撃でどうするというのか、逆に不気味
になる。
千秋は攻撃をすると直ぐ藤木の元に戻った。
外見は治ったが意識はないままだ。
そんな千秋を見て、丸山はフト思いついた。
藤木をいたぶってみるか。
そうすれば千秋と言う女も何か変化を見せるか
も知れない。
そう思った瞬間だった。
背筋に冷たいものが流れた。
感じたことない(気)だ。
辺りを見渡すが誰もいない。
ひょっとしたら、篠原雪が来たのかとも思ったが
気絶している藤木と栗原千秋しかいない。
何かがおかしい。
時折感じる莫大な気の圧力・・・
何なんだ。
誰か他にいるのか。
もう一度周りを見渡してみた。
やはり誰もいない。
栗原千秋は藤木の前で両手を広げ、丸山を睨ん
でいる。
やはりこの女か?
丸山は腕から無数の矢を飛ばしてみた。
千秋はそれをことごとく跳ね返した。
「ん?」
気を発せず、この女は飛んでくる矢をはじき返す
ことができるのか。
面白いぞ、この女。
丸山は黄ばんだ歯を出して舌なめずりをした。
興味の対象が変わった。
藤木を殺るのは後でもいい。
まずこの女をいたぶってみるか。
しかし、殺すことはできない。
あの男に生きたまま渡す約束をした。
まあ、しかい、殺さなければいいんだ。
楽しませてもらうか・・・
丸山笑顔を浮かべながら、ゆっくりと、千秋に
近づいた。
「楽しもうじゃないか、姉ちゃん」
黄ばんだ歯からは、濁ったよだれが滴り落ちて
いる。




