209話 グールの戦い
消えた丸山は突然藤木の背後に現れた。
そのまま剣を藤木に突き刺そうとしたが、藤木
も横にかわした。
丸山の行動を読んでいたようだ。
「ほー、かわしたか」
頬をポリポリ掻きながら丸山は苦笑いをしてい
る。
S級グールには再生機能が備わっている。
多少の傷なら治すことができる。
問題はその時間だ。
優秀なグール程再生に要する時間が短い。
しかし短いと言うだけで必ず時間は必要になっ
てくる。
その再生には大きな(気)の力がいる。
気の保有量はグールの能力にもよるが当然有限だ。
人間で言うところの体力と思えばいい。
気の総量が底を突くと、当然再生もできない。
戦いで、再生が効くと言っても、当然ダメージを
受ければ再生に時間がかかるので、能力は落ちる。
再生すれば気の総量も落ちて行くので、ダメージ
を受ければそれだけ負けに近づいて行く。
人間とグールの戦いは簡単だ。
人は心臓が止まればそれで終わりだ。
再生もない。
グール同士の戦いは人間同士の戦いとは様相を異
なる。
再生が出来なくなるまで気の総量を減らし、グー
ルの核を潰せばグールの死となる。核を潰さなけ
れば、グルーは時間さえあれば再生が可能だ。
つまり核の潰しあいがグールの戦いの勝敗になる。
「お前が背後を専門に襲う卑怯者であることは有
名だ。手の内は知っている」
藤木は壁に背を着けた。
丸山の戦いはいやらしい。
相手の背後に回り背中から核を狙う。
人間にも核がある。
死とはこの核が破壊された時の事だから、グールと
基本的には同じだ。
ただ、人間の核は心臓に張り付いている。
移動ができないのだ。
その点グールの核は身体中自由に動き回ることがで
きる。
核がどこにあるかわからないのだ。
核の所在を知るには気の総量をゼロにし、相手を
弱らせるしかない。
気が核の居場所を消しているだけだから、気が無
くなれば核の所在が判明する。
この核を潰さないと、グールは何度でも生き返る
事が出来る。
グールの戦いは、核潰しの戦いともいえる。




