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205話 品物

「貴様が金持ちの家にもらわれて行ったと聞い

 て俺は悲しかったよ、オモチャがなくなった

 からな」


千秋の心臓は高鳴っていた。

やっと見つけた。

このボタンの主に、やっと会えたのだ。


あの日千秋を救ってくれた榎田直人が落として

いったボタン。

千秋はそれをペンダントに加工し、あれから片

時も外さず身に着けてきた。


変わる為の証として。


「下らん話はいい。なんで襲ってきたのか聞い

 ているんだ」


「ほう、俺のおもちゃが一端の口を叩いていや

 がる、おいおもちゃ、貴様誰に口を聞いてい

 るのかわかっているのか」


藤木は挑発に乗らない。

丸山を睨みつけたままだ。


「俺がなんでこっちに来たかわかるか。それはな、

 直人、お前がこっちにいるとわかったからだ。

 感謝しろよ、お前を殺すのは俺だけで良いと、

 他の奴らは全部向こうに回してやったんだから

 な」


「四十人も引き連れ、大層な事だ」


「ホォー、大したもんじゃないか、昔の直人は俺

 の前ではいつも体震わせていたのに、今は震え

 てもいない。さすが伊集院の腰巾着と言われる

 だけはあるよな」


丸山の挑発は執拗だ。


「元木博士の正体を受けて我々は来たんだぞ」


「元木?なんじゃいそれは、俺はあの狂った博士

 の子分じゃないぞ、単なる協力者だ」


「協力者なら元木博士の指示を守るのも義務だろ

 うが」


「けっ、相変わらず糞硬い野郎だ。ま、いいか死ぬ

 前に教えておいてやろう」


丸山は舌で唇を濡らすと


「品物は元木に渡すより高値で引き取ってくれる相

 手が見つかったからさ」


「品物?」


「貴様らが持ってきたあの女だ」


聞き耳をたてていた千秋の身体が固まった。

目的は自分達なんだ。

女と言うからには、メイサの千秋の事なんだろう。

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