1話 グール物語(喰種ストーリー)
2090年地球の人口は爆発的に増えていた。
犯罪抑制政策として、犯罪誘発因子を持つ
人間はあらかじめそのDNAを変革させられ、
大きな犯罪はほとんど行われなくなってい
った。
しかし人口増加はその為だけではなかった。
あらゆる人間の贓物のパーツを作ることが
でき、人類は脳の死亡が寿命という世界に
突入していた。
120歳までは間違いなく生きられることは、
人類の人口を300億にまで押し上げていた。
このままでは地球上のあらゆる生物を人類
が食べつくしてしまう、そんな危機を人類
自身が感じ始めた頃、地球が怒ったのだろ
うか。
それはほんの一瞬、瞬く間に起きた変異だ
った。
地球がピンクに包まれ、一瞬ぐらりと揺れた
時、人類のあるDNA因子が突然変異を起こした。
グール(喰種)の誕生である。
グールと普通の人間との区別は外見からは
一切わからなかった。当然である。元々人間
なのだから。
怖いのはグールになった当人ですら自分が
グールになったことに気付かなかったことで
ある。
グールは普段通り、普通の生活をしていた。
普通でなくなるのはほんの一瞬、人を喰らう
ときだけだ。
グールの特性は一つだけ。
人を一か月に一人食べないと肉体そのものが
霧散する事だ。
人を喰らう時だけグール化し、その力は異常
な強さとなる。
最初人々はグールの存在にきずかなかった。
当然だろう。
グールになる当人ですら知らなかったのだか
ら。
悲劇は小さな家庭の中で起きた。
朝起きれば、自分の家族が一人消え、又一人
消えといなくなったからだ。
まさか残っている家族の中にグールがいると
は当初は誰もきずかなかった。
最初に気付き始めたのは、グールになった当
人たちだった。
食欲がわかないのだ。
グールは月に一度人を喰らえば、後は何も食
べなくてよかった。いや、食べられなかった
のだ。
人以外の物を口にすると吐き気をもよおし
食べられなかったのだ。
さすがにこれは変だと気付き始め、仲間を集め
話し合うことで、グール化の実態がわかって来
た。
流石に人類の方もこの事態を手をこまねいて見
ているだけではなかった。
グールがいる。
しかも人間の中に。
グールは人を喰らう。
しかし、誰がグールで、人間か、その判別は
人間にはできなかった。
グールは、グール化した人間を食べると、死ん
でしまうので判別はできるが、判別が出来るの
は、グール化したその一瞬でしかわからないの
で、結局グールにも直接的な判別方法はなかっ
た。
しかし、突然変異でグール化が起きたように、
長い間グールと人間との戦いが行われると、その
間に、本能でグールの存在を嗅ぎ分ける人間が
現れて来た。
それがハンターと呼ばれる、グール(喰種)狩
りの特殊組織だ。
長い間、人間は喰われるがままだった。
グール化したグールに人間の力はあまりにも
非力だったからだ。
しかしハンターの出現により事態は少しづつ変
わっていった。
ハンターと呼ばれる人たちには、グールを嗅ぎ分
ける能力と共に、グールと対等、もしくはそれ以
上に戦える特殊能力が備わっていたからだ。
この物語は、人類が地球の呻きによって、人間を
喰らうグールと戦い始めて10年。
と、ある日本の都市の路地裏から始まる。