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199話 あなたに私の心配をしてもらう必要はないわ

藤木の姿が消えると千秋も我に返った。

「侵入者あり」の情報は雪の態度を見ても意外

なことなんだろう。


このところ何かと(格闘)の場面が多い。

ハンターの時も確かに格闘の機会は多かったが

実際は幽厳村正と力也の姿を見ただけでグール

達は逃げてしまうか、もし格闘になっても力也

がほとんど倒していた。

千秋が実際に戦うことなど、ほとんどなかった

のだが、この数日、千秋が実際に戦う機会が非

常に多い。


元々戦うことは嫌いだった千秋が格闘技を習い

始めたのは、身を守ると言うより、誰かを助け

たいとその気持ちの方が強かった。

戦闘行為自体は大嫌いだった。

だから、力也が戦っている時無意識に相手の弱

点を見つけるようになったのかも知れない。


「侵入者あり」の放送は千秋を緊張させた。

又戦わなければいけないのか、無意識にそう思

うと心が折れそうになるのだ。

しかし千秋の口から発せられた言葉は


「私も戦います、どちらに行きましょうか」


だった。

戦いたくはない。

しかし素知らぬふりもできない。

だったら戦いに身を投じた方が気が楽だ。

千秋の基本的な人生観が、結局千秋を戦いの渦

中に巻き込んでいるのだ。


「千秋ちゃんはここにいて」


「えっ、私だって戦えます」


「そんな事はわかってます。でもその二人を守る

 人が必要でしょ。敵は四十人よ。私と藤木君だ

 けで全員を足止めするのは無理だわ、必ずここ

 にも敵は侵入してきます、だから千秋ちゃんは

 ここで二人を守ってくれる」


確かにメイサと力也は眠ったままだ。

しかし、この二人より藤木と雪の方が心配だ。


「でも雪さん、とても疲れているようで」


「あなたに私の心配をしてもらう必要はないわ」


雪はぴしゃりと言い放った。

言葉の中に雪らしからぬ怒気すら感じられた。


「え、ええ」


黙り込む千秋に


「とにかく千秋ちゃんはここにいて、二人を守っ

 てくれる」


言うと雪もフッと消えた。


「そんなに怒らなくても」


千秋は口を尖らせがらメイサと力也を見た。

二人は気持ちよさそうに眠ったままだ。


「四十人よ。私達三人がここでのんびりしてるだ

 けなんて、ダメ私には我慢できないわ」


千秋は周りを見渡した。

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