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18話 千秋の実力

目前に近づく赤と白のグール


「強くなるのよ」


雪の言葉が頭の中で鳴り響いている。

千秋は無意識に薬瓶から錠剤を一錠掴むと口の

中に放り込み、がりがり噛み砕いた。


首にぶら下げているネックレスを手で掴むと

小さく叫んだ


「昔の私じゃない!」


千秋の癖だ。

困った時、気弱になった時いつもこの癖を出す。


赤グールの鉾先が千秋の体を貫くその瞬間、横

に転がり寸前のところで避けた。

その上から白グールが、とどめとばかりに千秋

の喉元に剣を突き刺した。


「見える!」


刺されようとしているその瞬間が、まるでスロ

ーモーションを見ているようにゆっくり感じら

れるのだ。


さっき、薬を飲んだ瞬間、不思議な躍動感が体

中を駆け巡った。


「強くなれる!」


ささやいた雪の言葉は、千秋の姉の姿に重なり

それは、絶対強くなったという確信に変わった。


千秋は指輪から剣を出すと、自分の喉元を突き

刺す白グールの剣を払いのけると、白グールを

思い切り蹴りあげた。


白グールはまるで、ボールのように吹き飛ぶと

そのまま崩れた塔屋のコンクリートの中にめり

込んで行った。


「嘘」


力也も幽厳も、三人のグール達も、千秋の突然

の変化に驚いたが、一番驚いているのは千秋自

身だった。


「何なのこれ、身体中に力がみなぎってる感じ。

 ホントに強くなってる」


白グールが吹き飛ばされたのを見て、怒った赤

グールが両手の先を尖らせて千秋に襲い掛かっ

た。


「見える!」


千秋は赤グルを微動だけでやり過ごすと、赤グ

ールの眉間に剣を突き刺し、身体中の気を剣先

に流入させた。


途端赤グルーの動きがピタと止まり、硬直し、

しぼむことなく膨張しそのまま一気に爆ぜた。


風船のように爆ぜた赤グールは、粉々になると、

その粒子が一度集まりかけようとしたが、一つ

一つの粒子がまるで裏返るように自らを飲み込

み、あちこちで小さく爆ぜると、全てが霧のよ

うに霧散した。


後には赤いパチンコ大の玉がコンクリートに残

っているだけだった。


グールの本体、いわゆる核と呼ばれているものだ。


千秋が赤い核を足で押しつぶすと、核から赤い煙

が一瞬立ち上り、そのまま風に持ち去れていった。


グールの完全消滅である。

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