185話 そんなの無理よ
千明はメイサの手を握り直すと雪を見つめた。
雪はゆっくり頷いている。
力也も今は大人しく千秋の行動を見守っている。
目を閉じた千秋は思いを一点に集中させた。
さっきは耳元で雪の誘導があった。
その雪はメイサの身体にショックを与え(命)
を揺り動かしている
メイサ・・
メイサ・・
千秋はゆっくりメイサの意識に沈み込んでいっ
た。
意識が完全にメイサの心の核とシンクロした時
千秋は自分の姿が見えるようになった。
先ほどと同じだ。
メイサとシンクロは出来た。
後は、メイサの心の核を探し出すだけだ。
時間は限られている。
はやく見つけないと・・
その時だった。
白く厚ぼったい塊が千秋目がけて集まって来た。
気が付けば完全に取り囲まれている。
拳を剣に変え塊達の攻撃に備えると突然雪の声
が届いた。
「ダメ、それと戦ってはダメ、それはメイサさ
んの抗体よ」
「あなたは異物として捉えられているの。その抗
体に危険な物と認識されたらもうお終い。抗体
を全滅さすしかないけど、抗体を全滅させれば、
千秋さんの命も危ない、とにかくじっとしてい
て、抗体にあなたが危険な物でない事を認識し
てもらう必要があるの」
「もういい加減にしてよ。それでなくても時間が無
いのに、一体どうなっているの」
「じっとしているのよ。抗体にあなたの事を隅々ま
で調べさせ、メイサさんに危害を及ぼさない味方
なんだと知らせる必要があるの」
言われなくとも千秋はもう動くことができない。
周りは抗体にびっしり囲まれている。
身体のあちこちをつつかれ、声を上げて叫びたいく
らいだ。
「こいつらいつまでいるのよ」
「千秋ちゃんが危険でない事を認識するまでよ」
「もし認識しなかったら?」
「聞かないほうがいいと思う」
雪がボソッと言った。
「とにかくジッとしてるのよ、大丈夫、千秋ちゃ
んのミトコンドリアと、メイサさんのミトコン
ドリアはシンクロできるぐらい近い構造なんだ
から」
「それにしてもこいつら、しつこいわよ、それに
あたしの身体溶けて行くみたい」
「我慢して千秋ちゃん」
「いやだ、もう、右腕完全に溶かされてしまった
わよ」
千秋は小さな悲鳴を上げた。
動くなって・・・
そんなの無理よ・・・・




