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178話 千秋の首が噛み切られた

動こうとしないメイサの前に千秋は立ちはだか

った。


念でメイサの心に入り込んできているだけだ。

元より本体は無い。

千秋が戦える術はない。

しかしこのままメイサが殺られるのを見過ごす

こともできない。


「メイサ、メイサってば」


しかしメイサは縮こまったままだ。


「ぐわーぉ」


異種ミトコンドリアが千秋に襲い掛かってきた。

念だけであっても、ダメージは外にある肉体に

連動している。

痛みは、現実の千秋にもろに振りかかる。


「くっ」


千秋はミトコンドリアの攻撃をメイサに襲い

かからぬよう、わが身で受け止めた。

腹が裂け、内臓がえぐられる。

このままでは、メイサが殺られる前に千秋が

死んでしまう。


「メイサ、これは訓練じゃないのよ、現実なの

 よ、あなたがそのままだと、あなたが死ぬ前

 に、私が死んじゃうわ」


しかしメイサは震えて千秋を見ようともしない。


異種ミトコンドリアは、構わず千秋に何度も

襲いかかって来た。

その都度、千秋の身体は破れ、破壊されていっ

た。


「メイサ、あたし、もう駄目、恨んでやる、あ

 んたなんか大嫌いだ、でもいい、もういい、

 あんたの為に死んでやるわ、だからあんたは、

 一生後悔しなさい、何もせず、私を見殺しに

 したろくでなしのメイサだと」


それでもメイサは震えている。

ガタガタ、ガタガタ、頭を抱え、小さくうづく

まり震えたままだ。


異種ミトコンドリアが千秋を咥えた。

頭をすっぽり咥え、今にも噛み砕こうとしている。


「め、メイサ」


千秋の声がどんどん弱くなっていった。


「がり!」


いびつな音が響くと、千秋の動きが止まり、首が

噛み切られた。

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