170話 訓練、これは訓練なんだ
千秋の攻撃をメイサは無意識によけた。
身体が妙に軽くなった感じがする。
千秋が鬼の形相をすればするほど、メイサの心
は落ち着いてきた。
頭の中にははっきり思い浮かぶことがある。
「訓練、これは訓練なんだ」
フット気づけば左手が銃に変わっている。
無意識に武器を呼び出していたのだ。
「弱虫は死ぬのよ」
千秋は何度も何度も攻撃してきたが動きがまる
で遅い。
昔ハンター養成所で戦っていた時ですらこんな
遅くはなかった。
「あなた誰なの?」
「ん・・・」
千秋は攻撃の手を止めた。
「私は千秋よ。わからないの、あなたが尻尾を
巻いて逃げ出した千秋よ」
「あなたが千秋なわけない、千秋はそんなに鈍く
は攻撃してこなかった」
「鈍い・・私の攻撃が鈍い・・に・ぶ・い・・」
突然千秋の姿が流れた。
流れて液体状になったそれは、どす黒い姿でメイ
サの周りをうごめき始めた。
「とうとう正体を現したわね」
メイサは油断なく液体を見ると、少し距離を開け
た。体が勝手に動いてくれるのだ。
無意識の防御・・・
「訓練ってこれの事?」
少しづつ後ずさりすると、照準を液体に合わせた。
「雪さん上手く入ることが出来たわ」
千秋はメイサの心が入った肉片に指を差し入れて
いた。
「じゃあ、それをこいつに重ねてくれる」
異種ミトコンドリアが入った肉片だ。
拳大の大きさのまま、雪のピンクのシールドの中で
暴れ回っている。
「それって異種ミトコンドリアでしょ、重ねたらメ
イサの中に入っちゃうんじゃないの」
「元々この異種ミトコンドリアもメイサなの、メイサ
そのものだといっていいわ」
「どうゆうこと?」
雪はしばらく考えていたが
「メイサの心の核が分裂して出来上あがったのが異
種ミトコンドリア、異種ミトコンドリアもメイサ
なの、異種ミトコンドリアが死ねばメイサも死ぬ
の」
「えっ?」




