16話 篠原雪
叩きつけられた赤グールはすぐさま起き上がる
と銀グルーに塊となって突進していった。
それをキワで交わすと後ろから赤グールを捕獲
し再度コンクリートに今度は何度も何度も叩き
つけた。
まるで相手になっていない。
たまらず白グールが加勢に駆け付けたが、赤
グールと白グールが一直線の位置に重なった
時、銀グールが右の触手で二人を団子のよう
に突き刺すと、そのまま壁に突き刺した。
串刺しにされた二人のグールは壁から逃れよう
とするがピタリと刺されこまれ身動きができな
い。
赤、白グールも凄かったが、その二人をまる
で子ども扱いで翻弄する銀グールは何者なのだ、
千秋はすっかりグール同士の闘いに魅入ってい
た。
突然銀グールが目の前に現れた。
ぼやけた顔だが、表情ははっきり見える。
千秋と同じ女性だ。
今そこで戦っていた銀グールだ。
ぼやけてはいるが、美しさははっきりわかる。
なんでここに、、
銀グールは左手でゴムのように延ばした触手
で二人のグールを串刺しで押さえつけたま
ま、千秋に笑いかけた。
こんなに早く移動できるなんて、、
驚く千秋に
「びっくりした?」
やはり話せるのだ。
銀グールも。
「だ、誰あなた」
雰囲気が誰かに似ていると思ったが、姉だ。
10年前、母と共にグール化してしまった姉と
同じ雰囲気がする。
「話は後で、これ飲みなさい」
銀グールが手を広げた。
錠剤の瓶が乗っている。
「何よこれ」
「強くなりたいんでしょ」
「えっ?」
「えっじゃなく、あのグール倒したいんでしょ」
銀グールが目で押さえつけているグールを指した。
こくんと頷く千秋に
「じゃあこの錠剤一粒飲みなさい、強くなれる
から」
「なんで?」
「だから説明は後で、とにかく飲みなさい」
目の前のグールが姉のように思えて逆らうこと
が出来ない。
「雪、篠原雪と言うの、さあ早く飲みなさい」
雪は強引に千秋に薬瓶を握らせた。




