165話 飛び散った肉片
「まずは異質ミトコンドリアがどこにいるか探
さなければ」
雪は呟くと
「千秋ちゃんはメイサさんの心が入った細胞を
探して?」
千秋に頼んだ。
「メイサの心って?」
「昔から言われている、人間の心よ」
「心は脳が作り出す概念でしょ」
きょとんとする千秋に
「心はそれ自体明確な細胞として存在するのよ」
「嘘!」
「人間だった時は心の細胞は脳の細胞の中に張
り付いていたから、そういう間違った考えに
なるんだけど、グールになると、心の細胞は
自由にあちこち移動できるの」
「心って、私達が昔から言ってる、あの心の事
ですか」
「そう、メイサとしてメイサの細胞を動かす核
だと思えばいいわ。つまりメイサ自身のこと」
しばらく黙って考えこんだ千秋は、納得したの
か
「でもこれだけ散らばってしまったら、どこに
メイサの心があるのかわからないわ、どうや
って探したらいいの、それに部屋中に飛び散
ったメイサの肉片、もう死んでるんじゃない
の」
あまりに粉々になってしまい、気味悪さも半減
してしまったのだろうか、平然とこびりついた
肉片を見つめている。
「その肉片、よく見てみなさい、どの肉片も微妙
に動いているでしょ、それにバラバラだったあ
ちこちの肉片が少しづつ集まり、固まり始めて
るでしょ」
言われてみれば確かに、小さな肉片がまるで子虫
のように、少しづつ集合し固まりが大きくなって
いってる。
「やがてそれらが大きな固まりになるはず、それ
の一つ一つが意志あるミトコンドリアだと思っ
て間違いないわ」
「その窓際の大きい奴、それが特大に大きいわ」
千秋は雪の前にある大きな肉片を指さした。
肉片は雪が言うように小刻みに揺れている。
決して死んではいないようだ。




