160話 だからこそ僕達が立ちあうんです
雪は、自立ミトコンドリアを持つ者がグールに
なり、自立ミトコンドリアに取り込まれると人
を食べないと生きて行けないグールになると言
う。
しかも自立ミトコンドリアはいづれ目覚めるの
だから、何もしなくても結果は同じだと言う。
「でも、一生覚めないままの自立ミトコンドリ
アもいるんじゃないんですか」
千秋が思いついた質問をすると
「残念ながら自立ミトコンドリアの冬眠には限界
があります」
「どうしてそれがわかるの」
千秋が聞く。
「自立ミトコンドリア自体にも栄養が必要なの。
ストックしている栄養素が尽きたら必ず目覚
めます」
「それは最長どれぐらい」
「長くて10年と、伊集院博士は仰っていまし
た」
「十年って・・・」
千秋はメイサと顔を見合わせた。
グール化が始まって、今年で十年だ。
もし雪の言う事が本当ならば、今ハンターとし
て活躍している全員の自立ミトコンドリアが目
覚める計算になる。
「千秋ちゃんもメイサさんも、そして力也君も
この訓練を受ける受けないに関わらず、いず
れあなた達の中で眠る自立ミトコンドリアと
戦かわなければいけないの」
「でもどうして私達だけ連れてきたの」
メイサの質問はもっともだ。
ハンターの数は多い。
その全員がグールになるのならば、わざわざ、
千秋とメイサを連れてくる必要はない。
雪は苦笑した。
痛いところを突かれたのだ。
チラリ、藤木を見ると
「千秋ちゃんとメイサさんには自立ミトコンド
リアだけでなく異質ミトコンドリアも存在する
の」
「雪さん!」
藤木が雪の言葉を止めようとした。
「いいのよ藤木君、ここは正直に話したほうが
二人にはいいことだと思うの。異質ミトコン
ドリアに、知らないまま対座するのはそれこ
そ危険だわ」
「だから僕たちが立ちあうんで・・」
藤木は慌てて口を押えた。




