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159話 メイサからの質問

メイサの眼差しは真剣だ。

それまでのチャラケタ態度とは一変している。


「自立ミトコンドリアは今私の中でどうなって

 るんですか」


雪が眉をひそめた。


「自立ミトコンドリアはひょっとしたらまだ眠

 ったままなんじゃないんですか」


雪はジッとメイサを睨んだままだ。


「訓練とは、寝ている自立ミトコンドリアを

 冬眠から覚まさせるってことなんですよね」


「流石科学者さん。理解力が早い」


雪の表情は和らいだが、まだ少し硬い。


「茶化さないで、自立ミトコンドリアを呼び

 覚ましたら、おかしなことになるんじゃな

 いんですか」


「おかしなことって言うと?」


心なしか雪の顔が青ざめている。


「呼び覚ました自立ミトコンドリアを制御で

 きなかったら、私達乗っ取られるってこと

 なんでしょ」


メイサの頭には、幽厳村正の姿が浮かんでい

た。


「制御すればいいのよ」


雪は乾いた言葉で呟いた。


「その力が私達にあると保証できるんですか」


「・・・」


「答えてください、雪さん」


詰め寄るメイサに


「メイサ、どういう事?」


千秋がメイサに寄って来た。


「この訓練は、私達が幽玄村正みたいに自立ミト

 コンドリアに乗っ取られる可能性があるってこ

 となの」


「本当なの、雪さん」


雪は藤木に機械の電源を落とすように言うと三人

を自分の元に呼び寄せた。


「大体は、メイサさんが言った通り。でも少し

 違うわ」


「どこがですか」


「幽厳が取り込まれたのは異質ミトコンドリア、

 この異質ミトコンドリアを持っているグール

 の数は少ないの。メイサさんの中で眠ってい

 る自立ミトコンドリアは全てのグールが持っ

 ているの。言い換えれば自立ミトコンドリア

 を持っている者が人間からグールになったと、

 それは前にも言いましたよね」


メイサは頷いた。


「眠っている自立ミトコンドリアはいづれ、必

 ず眠りから覚めるの。訓練で無理やり起こさ

 なくても」


「自立ミトコンドリアに取り込まれたグールは

 どうなるの?」


千秋が聞いた。


「人を食べないと生きて行けないグールになる

 の」


三人は顔を見合わせた。

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